2022/07/21
こんにちは。歯科医師の村重です。今年は例年に比べて梅雨が短く、
暑さの本番が前倒しでおとずれているのを強く感じます。
長い夏を乗り切るためにもしっかりと栄養を摂ることが大事ですね。
栄養を摂る、つまり「食べる」ということに関連して、
今回のブログは前回に引き続き摂食・嚥下障害についてです。
摂食・嚥下障害を疑ったときにまず行うのが、検査及びその結果に基づいた診断です。
理想的には、「嚥下造影検査(VF)」や「嚥下内視鏡検査(VE)」など、
機器による精密な検査にもとづく判定が行われるべきですが、
これらの検査を全ての対象者に行うのは困難です。
そんなときに有用になるのがスクリーニング検査になります。
スクリーニング検査とは、より多くの人を対象に比較的簡易的な検査を行い、
何らかの疑いがある人を絞り込む検査です。
摂食・嚥下障害のスクリーニング検査は、嚥下機能を
「反復唾液嚥下テスト」「改訂水飲みテスト」「フードテスト」により評価します。
これらの検査を行い、総合的に判断して、嚥下障害かどうかの診断を行います。
また、スクリーニング検査の前には面接を行い、既往歴や現在の症状、
食事時の様子や、食事時に困っていることなどをヒアリングし、診断に役立てていきます。
①反復唾液嚥下テスト
まず、嚥下障害が疑われたときに最初に行うのが、反復唾液嚥下テストです。
反復唾液嚥下テストは30秒の間に、唾液を何回飲み込めるのかを計測していきます。
飲み込めた回数が2回以下の場合、摂食嚥下障害の可能性が高くなります。
この試験で特に問題が見られなければ、次の段階で行われるのが、改訂水飲みテストです。
②改訂水飲みテスト
改訂水のみテストは少量(3mlほど)の冷水を口腔内に入れ、嚥下動作を2回行います。
“むせこみ”の有無や、嚥下動作に対する呼吸状態の変化、声の変化を確認します。
この試験で特に問題が見られなければ、次の段階で行われるのが、フードテストです。
③フードテスト
フードテストは茶さじ1杯(約4g)のプリンやゼリーなどの半固形物、
またはお粥や液状の食べ物を食べ、飲み込んだ後に、口の中に食物が残っていないか、
“むせこみ”がみられないか、呼吸の変化はないかなどを観察します。
④頸部聴診法
フードテストと併行して、頸部の聴診も行います(頸部聴診法)。
食べ物を飲み込む動作のとき、聴診器を使って、
首の部分で嚥下音が聞こえるかどうかを聴診します。
この検査では、飲み込む前後での呼吸の音の変化を確認しています。
その他にも、咬む力を調べるために行うガムテストや、
症状や嚥下が障害されていると思われる時期に必要な検査を組み合わせて行います。
次回は精密検査にあたる嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)についてご紹介します。