2022/09/22
こんにちは。
訪問担当歯科医師の岩本です。
皆様は「8020運動」を
ご存じでしょうか。
1989年(平成元年)から
当時の厚生省と日本歯科医師会によって推進された、
「80歳になっても20本以上
自分の歯を保とう」
という運動です。
これには
「生涯自分の歯で食べる楽しみを
味わえるように」
との願いが込められており、
現在では5割を超える達成率だそうです。
訪問診療を続けていると、
確かに昔と比べて
歯がたくさん残っている方が
増えていると感じます。
80代になっても
硬いものが噛める方も
いらっしゃいます。
ですがその一方で、超高齢化が進み、
人生の最晩年においては
歯が残っていることにより
却って大変になっているケースも多いのです。
上の画像で、歯に纏わりついている
白い部分は歯垢(プラーク)と呼ばれるものです。
虫歯や歯周病の元となる歯垢は
歯の周りに住み着いた細菌が
作り出しています。
歯(住み着く場所)が無ければ
歯垢は作られません。
心身の衰えにより
口腔清掃もままならず、
また唾液などの自浄作用も衰えた
高齢者のお口の中に
歯が多く残っていれば
それだけ細菌の数が多くなり、
虫歯や歯周病、さらには
誤嚥性肺炎を引き起こすリスクも
高くなります。
また、一部分だけに単独で
歯が残っているようなケースでは
その歯が歯肉や唇に食い込み、
ひどい傷が出来ることもあります。
このような状態が
なるべく起こらないように、
ご本人が比較的お元気なうちから
あらかじめ衛生管理しやすい
環境に持っていくことはいわば
口の「終活」とも言えます。
日本歯科大学教授の菊谷武先生は
口の終活を考え始める目安として、
以下のような項目を挙げています。
・75歳以上である
・「フレイル」と診断された
・診療中の「むせ」が頻繁になった
・口腔内が不潔になってきた
・根面う蝕が頻発した
・認知症と診断された
・神経筋疾患(パーキンソン病など)と診断された
これらの項目のいくつかは、
ご家族や介護者の方でも
気づくことが出来ます。
終活の具体的な処置としては、
・機能させられない義歯は使わないようにする
(義歯の誤飲予防、衛生状態改善のため)
・粘膜を傷つけている歯を削って丸める、または抜歯する
・ぐらついて抜けそうな歯を抜歯する
(脱落歯誤嚥の予防)
などを行います。
注水しながら機械で歯を削る、
麻酔して抜歯する等は
その時のご本人の体調により
難しい場合もあります。
だからこそ、早い時期から
将来を予測して対策をとることが
重要です。