2023/12/07
こんにちは
歯科医師の法貴です。
12月になり今年も残すところ後僅かになりました。
今年一年をいい形で終われるように体調には気をつけてお過ごしください。
今回は口腔扁平苔癬についてです。
著名人の舌がん発表後,口腔がんの認知度は高まってきています。
そのため、口腔がん検診の目的で受診する方は増加し、
口腔がんの初期状態で発見される確率が高くなってきています。
がんは発見が遅れると、治療後の合併症や後遺症に苦しむだけでなく、
生命を脅かします。そのため、早期に発見するだけでなく、
口腔潜在的悪性疾患(旧名称;口腔前がん病変、口腔前がん状態)も
適切に管理することが大切になってきます。
口腔潜在的悪性疾患のなかでも、口腔扁平苔癬は
原因が明らかにされていない慢性難治性炎症性疾患です。
その治療は長期化することが多く、
完治を目標とする治療がないのが現状です。
口腔扁平苔癬は口腔粘膜に網状や斑状の白色病変で、
慢性に経過する炎症性疾患です。
ときにびらんや清瘍をともなうため、
接触痛や摂食時の不快症状があり,日常生活に
支障をきたすことがあります。
口腔扁平苔癬の有病率は1.27%といわれ、やや女性に多く、
両側の頬粘膜に多く発症しますが、歯肉頬移行部、
舌縁部、歯肉縁、口唇、口角部にも発症します。
原因は不明とされており、細菌やウイルスの感染,
薬物、精神的ストレス、内分泌異常などとともに、
歯科用金属アレルギーの関与が考えられています。
口腔扁平苔癬の平均悪性化率は1.09%と報告されており、
口腔潜在的悪性疾患とよばれるため、
定期的な経過観察が望ましいです。
鑑別すべき白色角化性病変として、
白板症と口腔カンジダ症があります。
白板症は境界が明瞭な病変で,口腔カンジダ症が
ガーゼで拭いとれる病変であるのに対し,
口腔扁平苔癬は境界が明瞭でない線状の病変で,
白色レース状病変と表現されることが多いです。
口腔扁平苔癬は、保険治療では
局所用ステロイド剤の治療が一般的です。
しかし、ステロイドの長期投与は菌交代現象を引き起こし、
口腔カンジダ症を発症するおそれがあります。
その予防のために,症状の改善にともなって
ステロイドを漸減した後に中止し、症状が悪化したら
投与を再開するというサイクルを繰り返します。
このため、治療は長期化し、治癒が見込めない症例が多いのが現状です。
近年,セファランチンやマレイン酸イルソグラジン、
タクロリムス等が口腔扁平苔癬に奏効するとの報告がありますが、
いずれも歯科保険適応の薬剤ではないため、
日常の診療に使われていません。
何かわからないことがあればいつでも相談に来てください。