西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

歯周病

こんにちは 歯科医師の西川です。
最近関節が痛むようになり、関節痛について調べていたところ、
リウマチと歯周病の関係についての情報を見つけましたので、
皆様にもお伝えさせていただきます。

歯周病をもつ関節痛を訴える患者さんは、
歯周病のない患者さんに比較して、その後関節リウマチと診断され
抗リウマチ治療を開始されるリスクが約2.7倍高くなる

歯周病は、30歳以上の成人の約80%が罹患している慢性疾患で、
口腔内のみならず、虚血性心疾患や脳卒中など全身のさまざまな疾患に
影響を与えていることが知られています。
その中でも最近特に、歯周病と関節リウマチとの関係が最近注目されています。
関節リウマチ患者の約8割の血液中には、抗シトルリン化蛋白抗体(抗CCP抗体)という、
シトルリン化という反応を経たタンパクを認識する抗体(血清マーカーの一種)が
検出されますが、この抗体はしばしば関節リウマチの発症に先立って検出されます。
また近年、歯周病菌の一種であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌(ポルフィロモナス菌)が、
現在知られている中で唯一シトルリン化を起こす酵素を産生する細菌であることが報告されました。
そのため、歯周病の罹患が、この歯周病菌の持つシトルリン化酵素による過剰なシトルリン化を介して、
関節リウマチの発症に先立って検出される抗CCP抗体の産生を引き起こし、
ひいては関節リウマチの発症につながっているのではないかと考えられるようになったのです。
2015年、京大病院リウマチセンターを受診した未治療・未診断の関節痛患者72名の追跡調査により、
歯周病をもつ関節痛患者は、歯周病のない患者に比較して、その後関節リウマチと診断され
抗リウマチ治療を開始されるリスクが約2.7倍高くなることを示しました。

慶應義塾大学病院 医療健康情報サイトより

また、スタンフォード大学などアメリカの大学の研究では、歯周病を放置してしまうと、

関節リウマチの症状が悪化することが研究で明らかになっています。
抗シトルリン化タンパク質抗体(ACPA)も保有している関節リウマチ(RA)患者では歯周病の発生率が高く、
これら2つの疾患の間に関連性があることが示唆されています。ブリューワーらは、歯周病の有無にかかわらず
RA患者から縦断的に採取した血液サンプルから、ヒトと細菌のトランスクリプトームの一対の分析を実施しました。
彼らは、関節リウマチおよび歯周病患者における反復する口腔菌血症および
臨床的関節炎の再発と相関する炎症性単球サブセット内の転写サインを特定した。
これらの口腔細菌は広範にシトルリン化されており、これらのシトルリン化エピトープの一部は、
親和性成熟を経た RA血漿芽細胞によって発現されるACPAの標的でした。
これらの結果は、歯周病が口腔粘膜の損傷を引き起こし、シトルリン化細菌を血中に放出し、
炎症性単球とACPA特異的B細胞を活性化する可能性があることを裏付けています。

https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.abq8476

 

以上のように、リウマチを引き起こしたり、悪化する原因にもなる歯周病。
歯周病とは、歯周プラーク(歯垢)の中の歯周病菌がハグキに炎症を起こし、徐々に周りの組織を破壊していく細菌感染症です。
痛みなどの自覚症状がなく進行するので、別名サイレント・ディジーズ(沈黙の病気)と呼ばれ、
症状が進行すると歯を支える骨(歯槽骨)を溶かし、やがて歯が抜けてしまう原因になります。
歯周病の症状の進行に伴い、ハグキが腫れると、些細な刺激で出血しやすくなります。
また病的口臭(歯周病が原因の口臭)や起床時のお口の不快なねばつきなども症状としてみられます。
そうなる前に、きちんと歯周病を予防していくことが大切です。