2024/10/10
こんにちは。歯科医師の西田です。朝晩だいぶ涼しくなり、確実に秋の訪れを感じる今日この頃ですね。
さて、今日はお口の中にできるがんについてお伝えしようと思います。
以前に、歌手の堀ちえみさんの舌がんの闘病の話題がワイドショーを賑わせ、口内炎を気にする患者様の来院が増えた時期がありました。
お口の中にできる悪性腫瘍を総称して口腔がんと呼び、舌・上下の歯肉(歯ぐき)・頬粘膜きょうねんまく(頬の内側)・硬口蓋こうこうがい(口の中の天井部分の硬いところ)・口腔底こうくうてい(舌と下側の歯肉の間)にできます。組織型分類(がんの種類による分類)では、口腔がんの約90%が粘膜から発生する扁平へんぺい上皮がんです。
口腔がんの症状について。
口腔がんでは、がんができた粘膜の色が赤くなったり、白く変色したり、形が変わったりします。口の中にしこりができる、口内炎がなかなか治らないなどの症状があらわれることもあります。
歯肉にがんができたときには、歯を支える組織にがんが浸潤しんじゅん(周囲に染み出るように広がっていくこと)し、歯がぐらついたり、入れ歯が合わなくなってきたりすることがあります。又、歯肉がんの場合、初期は歯周病の炎症と見分けがつきにくく、歯茎の増殖などの明らかな異常が見られ始めてからの進行が、著しく早かった例もありました。
進行したときの症状としては、粘膜のただれ、痛みや出血がある、口が開けにくい、食事が飲み込みにくい、話しにくい、などがあります。
首のリンパ節に転移したときには、しこりに気付くこともあります。
口の中に違和感があると感じたときには、鏡で口の中を確認してみましょう。
口腔がんの原因について。
口腔がんの原因はほかのがんと同様に、まだ解明されていない点も多くありますが、喫煙、飲酒、口腔内の不衛生、炎症などが関係しているといわれています。
最大の危険因子は喫煙です。タバコの煙には、多くの発がん性物質が含まれており、日本人を対象とした報告では、非喫煙者と比べて喫煙者(一日喫煙箱数×喫煙年数≧60)の口腔がんの罹患リスクは5.2倍とされています。
飲酒は、喫煙に次ぐ危険因子です。日本人を対象とした報告では、非飲酒者と比べて飲酒者(1日平均2合以上)の口腔がんの罹患リスクは3.8倍とされています。また、飲酒と喫煙の影響が足し合わさると、罹患リスクがさらに上昇することも分かっており、飲酒量が少なく喫煙なしの人と比べて、飲酒量が多く喫煙する人の口腔・咽頭がんの罹患リスクは4.1倍といわれています。(がん対策研究所多目的コホート研究より)
また、歯磨きをしていない、口のなかが乾燥している、治療していない虫歯があるなど、口腔内が細菌などで汚染されていると口腔がんを発症しやすくなります。
口内炎からがんが発生することもありますが、お口の粘膜はターンオーバーが早いので、口内炎の原因を取り除いて2~3週間たっても全く改善しない場合は、専門の医療機関を受診した方がよいこともあります。タニダ歯科では、がん化の可能性の高い口内炎などを診療中に見つけた場合、地域の口腔外科を紹介させて頂くことがあります。気になる症状があるときは、ご相談ください。