2021/07/08
こんにちは。訪問歯科医師の岩本です。
今回は薬についてのお話です。
訪問診療先では、
外来診療と同様に、
化膿するのを防ぐための抗菌薬や、
痛みを抑えるための鎮痛薬を
処方することがあります。
その時には、必ずお薬手帳を見せていただき、
こちらからの薬をお渡ししてよいかどうかの確認を行います。
訪問診療を希望されるようなご高齢の方の手帳には、
大抵、たくさんの薬の処方記録が
貼りつけられています。
お部屋の壁に吊られている日々の薬袋を見ると、
こちらから更にお渡しするのが申し訳なく思えるほどの
大量の錠剤が入っていることも少なくありません。
最近よく言われるようになった
「ポリファーマシー(多剤併用)」という言葉、
皆様も耳にされたことがあるのではないでしょうか。
「ポリファーマシー」とは、
「poly(複数)」+「pharmacy(調剤)」からなる言葉で、
多剤併用の中でも害をもたらすものを指します。
単に、服用する薬剤の種類や量が多いというだけでは
ポリファーマシーとは呼びません。
必要以上に多くの薬剤が投与されていることにより、
有害な事象のリスクが上がったり、
服薬の管理が困難になる、
服薬アドヒアランスが低下する、などの
問題を引き起こす可能性がある状態のことを指します。
ポリファーマシーについての明確な定義はありませんが、
5~6種類以上の薬剤が併用されている状態を表すことが一般的です。
この事態はどのようにして起こるのでしょうか。
寿命が延び、たくさんの疾患を抱えてしまった高齢者は、
複数の診療科を受診し、それぞれの診療科から薬を処方されます。
そしてそれら処方薬の副作用が現れると、
それを抑えるために新たに薬が追加されることもあります。
また、高齢者の中には認知機能が衰え、
きちんと服薬できない方もおられます。
もし処方した側が、このことに気づかず
「飲んでいるのに効果が表れない」と判断した場合、
さらに処方量が増え、過剰投与となる可能性があります。
現在では、これらの問題を解消するために、
・お薬手帳のさらなる活用
・飲み残しのチェックなど薬剤師による一括管理
・不必要な薬剤の減薬や中止
・高齢者にとって有害な薬剤の代替薬への変更
などが検討されています。
健康になるための薬のはずなのですが、
その副作用や相互作用のせいで、
食欲が無くなったり、
口が乾いて食べづらくなったり、
上手に飲み下せなくなったり、
といった摂食嚥下機能の障害が起き、
栄養がとれなくて衰えていくこともあります。
従って、歯科においても、
他科で処方されている薬の服用状況を正しく把握
しておくことは、非常に重要なのです。
訪問診療を受診される際は、お薬手帳のご準備をお願いいたします。