2021/11/04
こんにちは。往診担当の歯科医師の西田です。
この頃めっきり寒くなってきました。
秋の深まりを体感しながら、気がつくと、
炬燵やミカンが輝いて見える季節が到来していそうですね。
さて、今日のお題は‘’口腔ケア‘’です。
通常、訪問診療のご依頼を受けて、患者さまのご自宅や施設に伺い、
診察後に患者さま・ご家族さまに、治療計画についてお話しをさせていただきます。
その時に歯科医師が行う治療の他に、歯科衛生士が行う口腔ケアも、
おすすめをさせていただいております。口腔ケアってそんなに良いもの??
と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
以下に、おすすめする理由をご説明します。
ご高齢の方の中には手の不自由な方、寝たきりの方も多く、
ご自分での歯磨きは困難を極めます。
お口の中に汚れが蓄積した状態は、歯や歯茎や粘膜を傷め、
新たな虫歯の発生や、歯が抜けて入れ歯が使えなくなる原因、
慢性的な歯茎の腫れや痛みの原因、口内炎の原因などになります。
口腔ケアでは、患者さま一人一人のお口の状況に合わせた歯ブラシや歯間ブラシ、
スポンジブラシ、時には機械なども使い、丁寧に汚れを取っていきます。
そして、ご高齢の方が特にかかりやすい誤嚥性肺炎は、
お口の中の細菌が唾液や食べ物と一緒に気管などに入ることでおこる肺炎です。
口腔ケアでは、その原因となる細菌や汚れを取り去って綺麗にします。
また、飲み込みに関係する筋肉をマッサージすることにより、
筋肉のリハビリを行い、飲み込みの機能の改善を図るため、
誤嚥性肺炎の予防にもつながります。
口腔ケアによって食べ物を噛んだり飲み込んだりすることができるようになると、
体力や体の抵抗力がつき、全身の健康状態が良くなります。
さらに、ご家族や親しい仲間とのお食事や会話は、
脳への血流アップにつながり、脳の働きを活発にします。
何かにチャレンジしようという意欲も出てくるので、
閉じこもりや認知症の予防にもなります。
口腔ケアは、お口の中を清潔にするだけではなく、お口の機能を維持・改善し、
全身的な感染症を防ぐ、歯科訪問診療の重要な分野なのです。
口腔ケアの主な効果、まとめますと、
・お口の中を清潔に保って細菌の増殖を防ぐ。
・体力や体の抵抗力をつける。
・唇や頬、舌の動きを良くする。
・会話などのコミュニケーションを良くする。
・唾液の分泌を促し、お口の中の乾燥を防ぐ。
・誤嚥性肺炎など全身的な感染症を防ぐ。
・味覚を保ち、食欲を増進させる。
・閉じこもりや認知症を防ぐ。
最近の研究では、お口の中の細菌と認知症の関係も明らかになってきています。
脳と血管の間には脳血管関門というバリアがあり、
有害な物質が脳に入ってくるのを防いでいます。
ある種の歯周病菌の感染で炎症が起きると、
認知症の発症に関わるアミロイドβという物質ができます。
この有害物質が血液中に入ると、
脳血管のバリアを通過して脳内に入り込み、蓄積されるのだそうです。
認知症の予防に口腔ケアは欠かせないですね。