2022/04/28
こんにちは。歯科医師の村重です。
今年はこの時期になっても雨が多く、気温の変動も激しいため
皆様体調を崩されないよう、お気をつけ下さい。
さて、今回のテーマは前回に引き続き摂食・嚥下となります。
前回まで二回にわたって食形態についての内容でしたが、
今回は飲み物に付与する「とろみ」についてです。
水のようにさらさらとした液体は、速く動いてしまうので
誤って気管に入ることがあります。
とろみをつけることでゆっくりとした動きになり、
液体が気管に入るのを防げます。
そして、摂食・嚥下リハビリテーション学会では
嚥下障害者のためのとろみ付き液体を「薄いとろみ」
「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に分けて
表示していいます。
以下に、学会が公表しているとろみの基準を引用します。
薄いとろみとは、中間のとろみほどのとろみの程度がなくても
誤嚥しない、より軽度の症例を対象としています。
口に入れると口腔内に広がり、飲み込む際に大きな力を要しません。
コップを傾けると落ちるのが少し遅いと感じますが、
コップからの移し替えは容易であり、細いストローでも十分に吸えます。
中間のとろみよりもとろみの程度が軽いため、患者さんの受け入れは良いです。
中間のとろみとは、明らかにとろみがあることを感じるものの、
「drink」するという表現が適切なとろみの程度です。
口腔内での動態はゆっくりですぐには広がらず、
舌の上でまとめやすいです。
スプーンで混ぜると少し表面に混ぜ跡が残り、
スプーンですくってもあまりこぼれません。
コップから飲むこともできるが、細いストローで吸うには
力がいるため、ストローで飲む場合には太いものを
用意する必要があります。
濃いとろみとは、重度の嚥下障害の症例を対象とした
とろみの程度です。中間のとろみで誤嚥のリスクがある症例でも、
安全に飲める可能性があります。明らかにとろみがついており、
まとまりが良く、送り込むのに力が必要です。
スプーンで「eat」するという表現が適切で、
ストローの使用は適していません。
コップを傾けてもすぐに縁までは落ちてこず、フォークの歯でも少しはすくえます。
摂食・嚥下障害をもった患者さんでも、その患者さんの状態に合わせた
食形態やとろみを選択することによって、リスクを最小限に抑えた
食事を提供することができます。
「食べる」「飲む」というのは何にも代え難い人間の大きな喜びの一つなので、
多くの患者さんがその喜びを持ち続けられることを願っています。