2024/12/26
こんにちは。歯科医師の法貴です。
2024年もあっという間に終わりが近づいてきました。皆様にとってこの一年はいかがでしたでしょうか?
今回は高齢者への抜歯等の小手術の時の話になります。
現在,日本は超高齢社会を迎えており、2025年には65歳以上の人口の割合が全人口の約30%に到達すると推測されています。
このような社会において、抜歯などの口腔外科処置をはじめとした歯科治療を安全に高齢者へ提供する必要があります。
高齢者へ口腔外科処置を実施する際には,全身疾患や内服薬の影響、
さらには骨と歯がくっついてるなどの手技的な難易度の問題を考慮する必要があります。
抜歯の一般的な合併症について
歯科小手術のなかでも抜歯は基本処置の1つで、
口腔外科領域においては最頻度の手術であり、古くから歯痛の原因療法となっています。
抜歯術を施行するうえで重要なことは、合併症を避けることです。
一般的な抜歯後の合併症には”ドライソケット”や“抜菌後感染”,埋智歯においては“知覚異常”が代表例として挙げられ、
とくに高齢者に対しての抜歯においては、加齢変化にともなう歯の根の骨性癒着や歯根肥大などの宿主因子が抜歯手技の難易度を上げていると考えられています。
これらの合併症を防ぐために、歯根の骨性癒着や歯根周囲の骨硬化性変化を事前に画像で評価して、
さらには患者の全身的背景を考慮し、適切な診断および管理下で抜歯術を施行することが重要です。
高齢者へ安全に歯科手術を行うために
一般的に,高齢者は全身疾患を有する割合や多剤服用中である割合が高いです。それゆえ、
歯科小手術を施行する際に全身疾患の病状や内服状況を十分に把握し、必要に応じて医科主治医への対診を行う必要があります。
高齢者へ安全に歯科小手術を施行する際に、1)生活背景,耐術能,2)基礎疾患、内服状況,3)適切な臨床診断の3つが重要であると考えられます。
抜歯に限らず浸潤麻酔を使用する歯科治療を実施する際には、以下に留意する必要があります。
血圧手帳/血圧表の確認(血圧が安定する時間帯を確認する:基本的に午前中が比較的安定していることが多い)。
治療前に降圧剤の内服の確認/血圧測定を含めた
バイタルサインの確認。
心的ストレスを与えない環境づくり/手術手技.
使用する浸潤麻酔薬への配慮が必要です。
高齢者では多剤併用である割合が高く、内服薬の相互作用や内服忘れによる有害事象に留意して歯科治療を実施する必要があります。
それゆえ、術前の詳細な医療面接および医科への対診によって全身状題を把握することが重要です。
特に定期通院患者の薬剤変更や新規の基礎疾患の存在は見落とさないように注意が必要になってきます。
今年も1年お世話になりました。また、来年もタニダ歯科をよろしくお願いします。
2024/12/19
こんにちは。訪問担当の岩本です。
今回は、歯周病と肥満が認知機能に及ぼす影響についてお伝えします。
認知症(認知機能障害)は世界で最も罹患者数の多い神経疾患ですが、未だに有効な予防法や治療法は確立されていません。
しかし、認知症の発症メカニズムの一つとして、脳内で起こる炎症が関与しているのではないかと考えられています。
さて、『肥満』ですが、全身に軽度の慢性炎症を引き起こすことで、様々な疾患のリスクを高めるとされています。
『歯周病』は局所の炎症性疾患であるにもかかわらず、原因となる歯周病菌やその産生する毒素が全身性の慢性炎症を引き起こし、心血管疾患や糖尿病などの疾患と関連することが報告されています。
広島大学の研究チームは、この両疾患に着目し、両者の相互作用が認知機能に及ぼす影響を検討しました。
高脂肪食を与えた中年期肥満マウスの口腔内に歯周病菌を塗布したところ、このマウスが認知機能障害を引き起こすことを発見しました。
肥満による全身の慢性炎症と、歯周病による局所的な炎症が組み合わさることで、全身の炎症レベルが上昇し、脳に悪影響を及ぼすようです。
具体的には炎症性物質や歯周病菌の毒素が血液を介して脳に到達し、神経細胞の損傷や脳内炎症を引き起こすと考えられています。
研究の結果、肥満と歯周病はそれぞれが独立して認知症のリスクを高めるだけでなく、相互作用によってその影響をさらに増大させる可能性があることが分かりました。
※広島大学Webサイトよりお借りしました
歯周病は、重度に進行するまであまり自覚症状が無い人もいます。痛みがないからと放置せず、歯科による定期的なメンテナンスを続けることが重要です。
体調により通院することが難しい場合は、訪問診療による口腔ケアという方法もあります。
歯科衛生士が週に一度、隅々まで清掃するだけでも歯肉の炎症や不快症状を改善することが可能です。
気になる方は、一度ご相談下さい。
2024/12/19
こんにちは。院長の谷田です。
口腔内光学スキャナー(Intra Oral Scanner)
歯型や口腔内の状態をデジタルデータで取り込む(光学印象)最新の医療機器。
当院の光学スキャナーDEXIS IS 3800Wでは口腔内の虫歯や粘膜の状態を映像化して見ることもできる最新の光学スキャナーです。
実際の動画のデモはこちら
https://www.tanidashika.jp/medical-facility/
● 利点
・歯型を取る時に今までのように粘土のような印象材を噛む必要がないので、気持ち悪さや嘔吐反射(えずき)から解放される。
・3Dデジタルデータをクラウドからそのまま技工所に送信、あとはコンピューター支援の装置で自動的に詰め物やかぶせ物を作成することによって、人的エラ-がない細部まで精密な技工物ができる。
・現在当院では保険診療での型取り(一部適用されないケースもあります)やインプラント治療・保険外治療での型取りに使用しています。
タニダ歯科医院
〒669-1133 兵庫県西宮市東山台1-10-5
TEL:0797-61-2000
URL:https://www.tanidashika.jp/
Googleマップ:https://g.page/r/CUn1zmeIAnWtEAE
2024/12/12
こんにちは。歯科医師の上原です。
今年も残すところあと半月ほどとなりました。
寒い日が続きますが、くれぐれも体調を崩さぬよう気をつけてお過ごしください。
今回はお口の中にできる石についてお話しさせていただきます。
お口の中にできる代表的な石といえば、みなさんがよくご存知の歯石です。
歯石は歯に付着したプラークが除去されずに長期間堆積することで石灰化した沈着物です。
プラークは歯磨きなどで除去できますが、
歯石になってしまうと自分で取り除くことができないため歯科医院で除去してもらう必要があります。
歯石があると歯肉に炎症が生じやすくなるため、歯石除去は歯周病予防のためにも大切です。
ついてしまった歯石は歯科医院で除去してもらい、日頃のセルフケアでプラークのうちに取り除くよう心がけましょう。
さて、お口の中にできる石としてもう1つ唾石というものがあります。
唾石は、唾液腺内や管内に唾液の成分であるカルシウムやリンが沈着してできる石です。
唾液腺(唾液を作る工場)には大唾液腺と小唾液腺があり、
唾石は大唾液腺の中でも顎下腺に形成されることが多い疾患です。
症状ですが、唾石により唾液の排出が阻害されると食事中に唾液腺が膨れ上がったり、
痛みを伴うこともあります。また唾石が形成されていても唾液の分泌を邪魔しない位置にあると無症状で経過することもあります。
唾液が分泌できない状態が長く続くと、唾液腺自体が機能を失ってしまいます。
歯科医院で撮影したパノラマX線写真(お口全体の写真)で偶然見つかることもあり、
唾石が見つかった場合には、位置の精査のためにCT検査を行うのが一般的です。
治療は、痛みや腫れなどの急性症状がある場合にはまず抗菌薬を内服していただき炎症を緩和させますが、
基本的には外科的に摘出を行います。顎下腺唾石の場合、顎下腺管の出口は下顎前歯舌側のひだ付近にあるため、
唾石の位置が出口に近く、唾石を触れることができる場合には局所麻酔下に口腔内の粘膜を切開して摘出が可能です。
顎下腺内や顎下腺に近い位置の唾石の場合は、入院しての全身麻酔下での摘出となります。
この場合唾石だけを摘出できるケースと唾石とともに顎下腺を含めて摘出するケースがあります。
顎下腺を摘出する場合には、あご下の皮膚を切開して摘出を行うことになります。
施設は限られますが、20年ほど前よりほぼ切開を必要としない内視鏡下での唾石の摘出も行われており、
ここ数年で内視鏡下で低侵襲に摘出を行う施設は増えてきています。
症状があれば歯科医院を受診されると思いますが、無症状に経過する場合もあり、
その場合には久しぶりに受診して撮影したパノラマX線写真で見つかることもあります。
症状が無くても歯科医院を受診することで、お口のクリーニングを行って歯周病を予防していくだけでなく、
他の疾患を早期にみつけることも可能となりますので、定期的な受診をおすすめします。