2020/11/05
こんにちは。歯科医師の岩本です。
私が訪問診療に出始めたのは
もう15年以上前になりますが、
当時は歯を削る機械を
あまり使いませんでした。
診療するのは今と同じく、
お年寄りの方が多かったのですが、
ご自身の歯が残っている方が
ずっと少なかったのです。
平成元年からは
8020運動も始まり
(80歳でも20本以上自分の歯を保とう)
口腔衛生への関心が
高まってきた現在では、
ご高齢でもきれいな歯が
ずらっと残っている方が多く、
それに伴って歯を削る治療も
増えてきました。
ところで、若い頃から何十年も虫歯のない状態をキープしてきたにも
かかわらず、後期高齢者と呼ばれるころになって
急に虫歯が増えてくることがあります。
このタイプの虫歯の多くは、若い人の虫歯とは出来る場所が
異なります。奥歯のかみ合わせの溝や、歯と歯の間ではなく、
歯と歯肉の境目が黒くなってくるのです。
これを、根面う蝕といいます。
う蝕(虫歯)とは、
細菌の出す酸によって歯が脱灰される(溶かされる)ことです。
歯の表面は、エナメル質という硬い物資で覆われており
ある程度までは酸に耐えることが出来るのですが、
歳を重ね歯周病で歯肉が下がってしまうと
エナメル質に覆われていない歯根部が露出してしまいます。
歯根の表面は、エナメル質よりも酸に弱いため、
歯磨きが行き届いていないとすぐに溶かされてしまいます。
また、歳とともに唾液の量が減り、
食後の酸性化した口腔内を中性に戻す力(緩衝能)も低下しています。
また、金属冠などの被せ物で治療された歯は、
冠の縁にとても汚れがたまりやすく、また
清掃が難しいこともあり、未治療の天然歯よりも
さらに虫歯になりやすいです。
根面う蝕を防ぐ対策は、
まずは「歯周病の進行を抑えて歯根がなるべく露出しないようにする」
次に、「露出してしまった根の表面についた汚れはキレイに落とす」
そして、「フッ素(歯質を強化する)の力を借りる」です。
昔は「歯磨き剤の泡と清涼感でごまかされて、磨けていないのに磨けたと勘違いするから」
という理由で、歯磨き剤をごくわずか使用するか、またはつけずに磨くことが
推奨されていました。
ですが、現在では、高濃度フッ化物(フッ素)配合の歯磨き剤を多めにつけ、
磨いたあとは軽くゆすぐだけにしておくことで、虫歯の予防効果が期待できると言われています。
ただし、口の中に食べかすがたくさん残っている場合は、歯磨き剤をつけてしまうと
汚れが見えづらくなることもありますので、理想的には水だけでまず落とせる汚れは落とし、
仕上げとして歯磨き剤を使用するのが良いのではないかと思います。