ポリファーマシー

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

ポリファーマシー

こんにちは。訪問歯科医師の岩本です。

今回は薬についてのお話です。

 

訪問診療先では、

外来診療と同様に、

化膿するのを防ぐための抗菌薬や、

痛みを抑えるための鎮痛薬を

処方することがあります。

 

その時には、必ずお薬手帳を見せていただき、

こちらからの薬をお渡ししてよいかどうかの確認を行います。

 

訪問診療を希望されるようなご高齢の方の手帳には、

大抵、たくさんの薬の処方記録が

貼りつけられています。

お部屋の壁に吊られている日々の薬袋を見ると、

こちらから更にお渡しするのが申し訳なく思えるほどの

大量の錠剤が入っていることも少なくありません。

最近よく言われるようになった

「ポリファーマシー(多剤併用)」という言葉、

皆様も耳にされたことがあるのではないでしょうか。

 

「ポリファーマシー」とは、

poly(複数)」+「pharmacy(調剤)」からなる言葉で、

多剤併用の中でも害をもたらすものを指します。

単に、服用する薬剤の種類や量が多いというだけでは

ポリファーマシーとは呼びません。

 

必要以上に多くの薬剤が投与されていることにより、

有害な事象のリスクが上がったり、

服薬の管理が困難になる、

服薬アドヒアランスが低下する、などの

問題を引き起こす可能性がある状態のことを指します。

ポリファーマシーについての明確な定義はありませんが、

56種類以上の薬剤が併用されている状態を表すことが一般的です。

 

この事態はどのようにして起こるのでしょうか。

 

寿命が延び、たくさんの疾患を抱えてしまった高齢者は、

複数の診療科を受診し、それぞれの診療科から薬を処方されます。

そしてそれら処方薬の副作用が現れると、

それを抑えるために新たに薬が追加されることもあります。

 

また、高齢者の中には認知機能が衰え、

きちんと服薬できない方もおられます。

もし処方した側が、このことに気づかず

「飲んでいるのに効果が表れない」と判断した場合、

さらに処方量が増え、過剰投与となる可能性があります。

 

現在では、これらの問題を解消するために、

 

・お薬手帳のさらなる活用

・飲み残しのチェックなど薬剤師による一括管理

・不必要な薬剤の減薬や中止

・高齢者にとって有害な薬剤の代替薬への変更

 

などが検討されています。

 

 

健康になるための薬のはずなのですが、

その副作用や相互作用のせいで、

 

食欲が無くなったり、

口が乾いて食べづらくなったり、

上手に飲み下せなくなったり、

 

といった摂食嚥下機能の障害が起き、

栄養がとれなくて衰えていくこともあります。

従って、歯科においても、

他科で処方されている薬の服用状況を正しく把握

しておくことは、非常に重要なのです。

訪問診療を受診される際は、お薬手帳のご準備をお願いいたします。