2021/08/26
こんにちは、歯科医師の武田です。
「歯を守るための力のコントロール」について数回にわけて
お話しさせていただいております。
どうぞよろしくお願いします。
今回は、補綴物を作る際に
歯を守るために考えていることをご説明します。
◆ スチュアートグルーブ
上顎第一大臼歯の中心窩から平衡側へ抜ける、
最も大きな咬頭である近心口蓋咬頭の内斜面がたびたび、
ファセットでピカピカ光っているのを見たことがあるかと思います。
それは、対合歯の下顎第一大臼歯の遠心頬側咬頭の内斜面との間で、
平衡側の干渉を起こしているためなのです。
そこでワックスアップの際、最初から干渉が出ないように
斜走隆線に沿って、中央窩から咬頭頂に向かって溝を形成し、
非作業側運動時に咬頭頂が通り抜けやすいようにしたのが
スチュワートグルーブです。
天然の歯は素晴らしい機能を持っていますが、
スチュワートグルーブはありません。
補綴物を作る際に、歯を守るための技のひとつです。
スチュアート咬合器を作った事でも有名な
アメリカ・ナソロジーの大家
チャールス・E・スチュワート先生が唱えた溝です。
◆ トーマスノッチ
トーマスノッチとは、元来これも天然歯には存在しないものです。
咬合面を形作る方法としての基礎的考え方である
『ワックスコーンテクニック』
これはナソロジーの大御所であるピーター・K・トーマスが、
オーラルリハビリテーションの際に行うワックスアップの
テクニックとして世界中に広めたものだとして知られています。
このワックスアップの際に付与する形態です。
ただ、その元になったのは1950年代にナソロジーの始祖である
エベリット・V・ペインが
人の歯の発生の順序に従って形態を作っていく
ワックスアデッドテクニックがオリジナルです。
すなわち、1) 咬頭頂 2) 辺縁隆線 3) 中央隆線
4) 三角隆線 5) 発育溝 6) 福溝 7) 副隆線
8) 窩 の8要素を発育順序に従ってワックスアップして行く方法です。
これを後にピーター・K・トーマスがワックスコーンテクニックとして
世界中に広め、ナソロジーのワックスアップの手法として使われました。
このワックスアップの手法はオルガニックオクルージョンとして
合理的な咬合の与え方があります。
上下の歯の接触形態は1歯対1歯の咬合を与える事と
天然歯には無い2つの特徴の一つとして前述のスチュアートグループがあり、
もう一つ、ピーター・K・トーマスが付与形態として与えているのが、
『トーマスノッチ』です。
これは上顎第一小臼歯のスタンプカスプは中心咬合位で
下顎第一小臼歯の遠心窩に入りますが、
この時上顎第一小臼歯の頬側三角隆線が接触しています。
この時作業側の運動で干渉する事が多く
上顎第一小臼歯を動揺させてしまう危険がある為
あらかじめ下顎第一小臼歯の遠心斜面にV字状のノッチを彫り込んでおき、
そこから僅かに頬側に溝を彫り込んでおきます。
このように、作業側でスムーズに離して負荷を和らげる事を
目的にしているテクニックが『トーマスノッチ』です。
何にしても歯を守る為には中心咬合位では臼歯が接触し、
一旦顎が動けば前歯が誘導する事が重要なのです。
大学を卒業して間もないころ(数十年前になりますが…)
熟読した、ナソロジーの歴史から、咬合接触点とその運動路など
非常に分かりやすく解説してあり、かみ合わせを考える
基礎的知識を得られ、いまだに引用されることも多い
本があるのですが、すでに廃版となっております。
余談ですが、昨今の傾向として
「良書 = 売れる本」ではないことを痛感します。
歯科に限らずですが。
「書物復権」提唱人みすず書房社長、小熊勇次様に感謝し
少しでも多くの良書が復刊されることを願っております。
お気に入りのひとつです。
歯の健康、美しさを保つには、
定期的なクリーニングがとても大切です
ぜひタニダ歯科クリニックで定期健診を。
ご来院お待ちしております。