2022/08/04
こんにちは、歯科医師の武田です。
「歯を守るための力のコントロール」について数回にわけて
お話しさせていただいております。
どうぞよろしくお願いします。
◆ 主機能部位
食物を粉砕・細分化して嚥下可能な食塊を形成する一連の
咀嚼運動のなかで、咬合面は特に食物粉砕時に重要な役割を
演じている。この食物の粉砕が歯列上のどこで、どのように
行われているのかを知ることは機能的な咬合面形態を追求する
ための第一歩である。
そこで、歯列上での食物の粉砕部位を明らかにするために、
さまざまな試験食品で検討したところ、噛みしめ部位は
繰り返し試行しても1カ所に集中することが多く、この部位は
食物を噛みやすく、咀嚼時には中心的な役割を果たしているで
あろうと考えられ「主機能部位」とよばれる。主機能部位は
嗜好側(習慣性咀嚼側)とは違って、その顎側で最も噛みやすい
部位という意味から左右両側に求められる。
◆ 主機能部位の歯列内での分布
主機能部位の分布状況を調査した結果、
主機能部位は全被験側の67%で1カ所に集中し、
その部位は近遠心的には上下顎第一大臼歯間が55%と最も多く、
頬舌的には上顎臼歯の口蓋側咬頭内斜面と下顎臼歯の頬側咬頭内斜面
が88%と最も多かった。すなわち、主機能部位の多くが第一大臼歯
の機能咬頭間に存在していたということになる。
この要因として、ヒトの咬合の成立過程で、第一大臼歯の萌出後に
始まる乳歯から永久歯への交換期に、第一大臼歯には孤軍奮闘しながら
咀嚼機能の大半を担う期間があって、このときに獲得した主機能部位を
第一大臼歯が後方歯の萌出後も長年にわたって維持し続けた結果と考え
られる。また主機能部位が第一大臼歯以外の部位となることの要因
を考察すると、第一大臼歯の機能咬頭間の緊密な咬合が欠如していた。
乳臼歯の脱落によって第一大臼歯が咀嚼機能の大半を担う期間がある。
◆ 食片圧入と主機能部位の移動
食片圧入を主訴とする症例のなかには、従来からその原因として
あげられてきた歯間部にかかわる問題点がみあたらない症例がある
そのような症例の主機能部位を診査すると、第一大臼歯部での
咬頭嵌合位における緊密な咬合が欠如し、主機能部位がより緊密に
咬合する部位を求めて歯間部となり食片圧入を惹起したケースが
みられる。そこで食片圧入部とは直接にかかわりのない、従来は
食片圧入の原因とはされていなかった第一大臼歯部の機能咬頭
内斜面に緊密な咬合を回復したところ、主機能部は改善部に移動し
食片圧入は起こらなくなった。また多くの症例における食片圧入
改善時の主機能部位の移動量の平均は5mm前後で、この1咬頭
相当のわずかな主機能部位の移動で食片圧入が防げたことは、
咀嚼時には主機能部位が常に中心的役割をもつことを示唆する。
◆ 主機能部位と咬合接触
食片圧入の改善症例において咬合関係改善当日に起こっている
ことから、成人における主機能部位は、咀嚼を繰り返すうちに
噛みやすい部位を探し求めた結果として獲得されるものではなく、
咬頭嵌合位での噛みしめ時の咬合接触による咬合力の変化に対して
歯根膜受容器などが敏感に瞬時に反応して定まってくるものと
考えられる。第一大臼歯が主機能部位となるためには、まず、
主機能部位にふさわしい部位であることを顎口腔系に伝えるため
の適切な咬合接触が必要となる。これは噛みしめ時に咬合平面に
垂直な方向へ咬合力が加わるような咬合接触で通常では直径3mm
程度の範囲に保持する。
咀嚼効率を優先すれば、緊密な咬合は広い面積でしっかりと咬合
していることが望ましいが、第一大臼歯部の負担能力に不安がある
場合には、咀嚼効率を犠牲にしても、咬頭頂付近のややなだらかな
斜面に狭い面積で緊密な咬合を付与し、考え得る障害を回避する。
歯の健康、美しさを保つには、
定期的なクリーニングがとても大切です
ぜひタニダ歯科クリニックで定期健診を。
ご来院お待ちしております。