2022/12/15
こんにちは。訪問担当の岩本です。
今回は、体内の細菌についての話をします。
人間の身体には、1000種類以上の微生物(細菌、ウイルス、真菌、原虫など)が存在しています。
これらの微生物は消化器、皮膚、口腔、鼻腔、呼吸器、生殖器など
人体が外部環境に接するあらゆる場所に存在し、
それぞれ特徴的な構成の集団を作っています。
この集団は「マイクロバイオータ(微生物叢)」と呼ばれます。
その構成は人によって異なっており、全身の疾患や健康状態と密接な関係があることが分かってきました。
中でも腸管には最も多くの細菌が生息しており、
これらの菌叢が乱れる(ディスバイオーシス)ことによって
アレルギー、がん、パーキンソン病、うつ、炎症性腸疾患、リウマチなど
様々な疾患が引き起こされている可能性が報告されています。
近年注目されている「糞便移植」は
健康な人の腸内細菌を患者に移植することにより、
腸内の細菌叢を変化させ、病状の改善をはかる方法です。
臓器の移植や薬剤による治療と比べて
痛みや副作用が少なく、患者やドナーにとって
負担が少なくてすむことから、
期待の治療法として世界中で研究が進められています。
また、口腔内においては、
700種類以上の微生物が存在していることが
判明しています。
これらがバランスの取れた状態(シンバイオーシス)であれば、
善玉菌の働きにより有害な病原菌は排除され、
抗炎症作用、抗酸化作用なども期待できます。
反対に悪玉菌の比率が増え、ディスバイオーシス状態となると
虫歯や歯周病の発症リスクが高くなることが分かっています。
同じような物を食べ、同じように歯磨きしていても、その人の持つ細菌叢によって、虫歯になりやすい、なりにくいの差が出てくるわけです。
細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)を招く原因の中で、注目すべきものとしては
喫煙が挙げられます。
最近利用者が増加している電子タバコは、
従来の喫煙よりも健康的であると思われがちですが、
発生するエアロゾルは
口腔内のマイクロバイオータを変化させ
ディスバイオーシスを引き起こす
化学物質が含まれていることが
わかりました。
マイクロバイオータの形成は
出生時に母親由来の微生物を受け取ることから始まります。
その後は養育者の持つ細菌叢、口腔衛生習慣、抗菌薬の服用、
食生活、様々な要因に影響され、徐々に形成されていきます。
幼少の頃からの生活が成人後の疾病リスクにも
大きい影響を及ぼすと考えられるため、
今後の研究によって
より良い細菌バランスに誘導できる方法が分かれば、
口腔内のみならず全身の健康維持効果が
期待できると思われます。