2023/01/12
こんにちは、歯科医師の村重です。
前回ご紹介した摂食・嚥下精密検査であるVEやVFによって、
摂食・嚥下障害と診断された場合の対応のひとつに
摂食・嚥下訓練があります。
今回のブログではこの訓練について紹介します。
摂食・嚥下訓練には食べ物を用いない「間接訓練」と
食べ物を用いる「直接訓練」のふたつがあります。
以下に間接訓練の具体例を記します。
①肩・頸部・胸郭の関節可動域訓練
肩や首、胸郭の動きに制限がある場合は、
口腔期の運動や嚥下を妨げるので、
筋肉のリラクゼーションを行い、
関節の動きを広げるように動かします。
②舌・口唇・頬など口腔周囲のマッサージ・運動
食べ物や飲み物を取り込んで咀嚼し、咽頭に送る働きをする
舌や唇などの口腔器官の動きと動きに関わる筋肉を
働かすために行います。
マッサージを行って硬くなった筋肉を柔らかくしてから、
嚥下体操の様に自分で行う運動やリハビリ職
(主として言語聴覚士)が他動的に動かして行う運動、
舌圧子などで抵抗を加えて行う運動などを行います。
③ブローイング
鼻から空気が漏れ出る方や、唇を閉じる力・呼吸の力が弱い場合は、
コップやペットボトルに入れた水をできるだけ
長く優しくストローで吹く、巻き笛を拭くなど
ブローイング(吹く練習)を行います。
④咀嚼訓練
ガムやするめなどを使用して、噛むために必要な
筋肉を鍛える訓練を行います。
⑤頭部挙上訓練
嚥下に必要な喉頭挙上を促すために、舌骨上筋群、
喉頭挙上筋群の筋力強化を図ります。
仰臥位で足の先を見るように頭を上げます。
一人で行うのが困難な方は介助者が頭を持ち上げて
自動介助で行います。
⑥嚥下・反射訓練
嚥下反射を促すために唾液を飲み込む練習(空嚥下)を行います。
飲み込みが弱い方には、舌を前に突き出したまま
空嚥下をする(舌-突出嚥下法)方法もあります。
凍らせたスポンジで喉を刺激(アイスマッサージ)したり、
氷を口に含んだり(氷なめ)などの冷却刺激や、
チューブを鼻や口から通す刺激を与えて嚥下反射を
誘発することもあります。
⑦プッシング
声帯が閉じにくい場合、動きが良い方の声帯を
より内転方向に動かして声門閉鎖をカバーするため、
両手を胸の前で押し合うことや、壁や机などを
手の平で押すことをしながら強く「あー」、
「えい」などと発声します。
⑧Kポイント刺激法
口が開きにくい方は、綿棒や舌圧子などで
Kポイントを刺激することで、口が開きやすくなり、
食塊の咽頭への送り込み、嚥下反射が起こりやすくなります。
⑨メンデルゾーン手技
「ごっくん」をする時に喉頭が十分に上がらない方や、
食道の開きが十分でない方に、徒手で喉仏の挙上を
保ちながら飲み込む練習をして、喉頭が挙上する
感覚の学習を促します。
⑩発音訓練
嚥下と構音を行う器官は同じなので、
単語や文章の発声練習を行い、嚥下に必要な器官の運動、
筋肉の働きを促します。
次回は直接訓練についてご紹介します。