2023/03/16
こんにちは。
訪問診療担当の岩本です。
訪問診療は、何らかの理由で外部への通院が困難な方に対して行われます。
多くの患者さんはいくつかのご病気を抱えておられますが、
様々な基礎疾患の中で今回は、
心疾患を持つ患者さんの歯科治療時の注意点についてお伝えします。
心臓は、全身に血液を送り酸素や栄養を供給するためのポンプとして
毎日毎日、休むことなく働いています。
心臓の機能が低下すると、全身にうまく血液が送られなくなり
生命維持に直結する問題が生じます。
心疾患とは、心臓に関わる疾患の総称です。
そのため、心疾患を基礎疾患として抱える患者さんの歯科治療の際には、
歯科医師はかかりつけの医師に病状の問い合わせを行ったり、
歯科治療の計画についての助言を求めるなど、細心の注意を払っています。
注意点の具体例を挙げます。
狭心症や心筋梗塞の方の場合、
抗血栓療法(血液サラサラの薬など)が行われていることがあります。
このような場合、抜歯などの処置の後で出血が長引くことがあるため、
処方されている薬の種類を確認し、必要に応じて服薬の調整を検討します。
また、歯科治療に対する不安や疼痛によって交感神経が興奮し、
狭心症発作が引き起こされることもあるため、
処置前には麻酔をしっかり行い、痛みを極力取り除くようにします。
心臓ペースメーカーを装着されている患者さんにおいては、
歯科治療中に使用する電気メスなどが
ペースメーカーの動作に影響を及ぼすことがあるため、
問診時に装着していることをお知らせいただく必要があります。
心臓弁膜症を抱えている患者さんの場合は、
歯科治療に伴う出血には特に注意が必要です。
出血時に傷口から入り込んだ細菌が体内をめぐり、
心臓の弁や心内膜に細菌の塊が出来てしまう
「感染性心内膜炎」を引き起こす可能性があるからです。
これは命に関わる重篤な疾患です。
治療の前にあらかじめ抗菌薬を投与する、
また口腔内の細菌を減らすためのクリーニングを行っておくなどの
準備が必要とされます。
ところで、歯周病は、細菌の起こす炎症によって
歯肉や歯槽骨が破壊される疾患ですが、
炎症反応時に放出される炎症物質が血管に作用することで、
動脈硬化や冠状動脈疾患などの心疾患リスクを高めることがわかっています。
そのため、歯周病の予防や早期治療は、心疾患の予防につながるとされています。
患者さんと歯科医院との間で情報を共有することはとても重要です。
情報を基に適切な治療方法を選択することで、
安全かつ効果的な歯科治療の実現が可能となります。