歯を守るための力のコントロール ⑯

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

歯を守るための力のコントロール ⑯

こんにちは、歯科医師の武田です。

「歯を守るための力のコントロール」について数回にわけて

お話しさせていただいております。

どうぞよろしくお願いします。

 

◆ 咬耗は進む

 

歯の咬耗状態をみると同じ年齢でも、その程度に種々の違いが

みられる。特に中高年の中には、咬耗がそれほど進行していない

人から、歯冠がほとんどすり減って歯がなくなるのではないかと

心配されるような状態まで、その程度には著しい相違がみられる。

 

咬耗は、う蝕や歯周病とは、その性質が異なり一般的には

歯が咬合して機能している限りは、程度の差はあれ常に現れ、

生涯にわたって徐々に進行を続ける自然現象である。

しかしながら、これに心因性ストレスや咬合の不調和などの

種々の原因が作用して歯の摩耗が高められ、顎口腔機能異常や

審美障害などの不都合な状態を生じることがある。

よって、プラークコントロールによるう蝕や歯周病の予防と

並んで異常な咬耗からの歯質の保護をはかることは

口腔機能を健康にささえるうえで極めて重要なことである。

 

咬耗とは、上下の歯が繰り返し接触することによって

エナメル質や象牙質が摩耗することであるといわれている。

永久歯にも乳歯にもみられ、また前歯の切縁や臼歯の咬合面

のみならず、隣在歯との接触摩耗により隣接面にも起こる。

咬耗は、歯が萌出し咬合関係が形成されると同時に起こり

最初は目に見えない程度の極くわずかな歯質の摩耗が、

臼歯では咬頭の対合歯と接触する咬頭頂、隆線及び咬頭斜面

などから、また前歯では切歯の切縁や犬歯の尖頭などから

始まる。それがやがて、これらのエナメル質表面に点状

または線状に摩耗があらわれる。

永久歯列における咬耗の起点は通常下顎第一大臼歯の

機能咬頭である頬側咬頭頂と、上顎第一大臼歯の機能咬頭

である口蓋側咬頭頂である。これは第一大臼歯の萌出時期が

早いため機能的年齢が他の歯に比べて長いためと、

また最も咀嚼咬合が強いためと考えられている。

その後、範囲が広がり面が形成されてくると

咬耗小面または咬耗局面とよばれる面状または

帯状の小面ができるようになる。

おおむね20歳頃になるとこのような咬耗小面が、

総ての歯に形成されてくるといわれている。

 

萌出したばかりの歯冠の咬合面形態は、

必ずしもその個体の機能に適応した合理的な咬合関係

をもっているわけではなく、歯の排列の状態も

常に咬合に対して合理的であるとは限らない。

むしろ咬耗の少ない年少者の上下顎歯列が接触している

部位は極めてわずかで、かつ不均等であることが多く、

一定期間たつと過度に接触する部分が摩耗して

次第に歯列の各部分が均等に接触するように適応する。

これはいわば自然に行われる咬合調整のようなもので

咀嚼運動にあう適切な接触が得られるようになってくる。

このようなすり減りがエナメル質に留まっているものは

初期段階で、臨床的にも全く不快症状がみられない。

ところが咬耗がさらに進行してくると、咬頭はすり減り

象牙質の一部が斑状または線状に露出するようになる

このような状況の下ではエナメル質に比較して柔らかい

象牙質の部分が早く摩耗するため中央部がくぼみ黄褐色

に着色するようになり、時には化学的刺激や、温熱刺激

などに過敏になることがある。

 

生理的な咬耗が続いている限り、咬耗の進行は緩やかなため

生体の他の臓器組織にみられるように、適応力がはたらいて

障害が未然に防がれている。例えば咬耗による象牙質の摩耗

によってもたらされる歯髄障害に対しては、第2象牙質が

形成されて、歯髄が健康的に維持される。

また咬合面の摩耗による咬合高径の低下に対しては、

歯の代償性挺出と歯槽骨のリモデリングによる歯槽骨の挺出

とによって咬合高径が一定に保持される。

ところがこの生理的咬耗にさらに異常機能が加わるとこれとは

別に非生理的な咬合接触が起こる為に歯列全体の調和が乱され

アンバランスな咬耗状態を呈するようになる。

これは異常咬耗といわれる。

異常な咬耗の主たる原因は早期接触に伴う顎変位とブラキシズム

があげられているが、統計的にはブラキシズムによるものが多い。

 

異常な咬耗に対する処置方針は以下となります。

⑴    早期接触のない安定した咬頭嵌合位の確立

⑵    アンテリアガイダンスを患者固有の正常な顎運動に調和させる

⑶    できることなら偏心滑走時、全ての臼歯を離開させる

⑷    象牙質の露出により問題が生じている部位の修復

⑸    咀嚼、嚥下以外は上下歯を接触させないよう指導

⑹    ナイトガードの装着

早期接触

 

理想的な離開

 

歯の健康、美しさを保つには、

定期的なクリーニングがとても大切です

ぜひタニダ歯科クリニックで定期健診を。

ご来院お待ちしております。