歯を守るための力のコントロール ⑰

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

歯を守るための力のコントロール ⑰

こんにちは、歯科医師の武田です。

「歯を守るための力のコントロール」について数回にわけて

お話しさせていただいております。

どうぞよろしくお願いします。

 

◆    アプライアンス療法の効果

 

アプライアンス療法がどのような患者に有効なのかを示すエビデンスとして、

2017 年に PLOS ONE に掲載されたスタビリゼーションスプリントの効果を

検討したシステマティックレビューでは、短期的(2~12 w)に

顎関節症患者の疼痛を有意に軽減させ,特に筋痛に効果があることが報告された。

また 2021年に J Prosthet Dent に掲載された論文においても,

スタビリゼーションスプリントが疼痛強度を有意に減少させることが報告された。

これらの研究結果から,アプライアンス療法で効果が期待できるのは,

顎関節症の症状のなかでも疼痛障害,特に筋痛に効果があるということである。

疼痛障害患者に対し,アプライアンス療法は,自信をもって勧められる

積極的に選択したい治療法の1つだといえる。

 

1. 筋痛障害へのアプライアンスの応用

 

筋痛障害に対するアプライアンスの治療ターゲットは,睡眠時ブラキシズムの

低減にあるが,アプライアンスを就寝時に装着すれば,ただちに

睡眠時ブラキシズムがなくなるというわけではない。

ほぼ半世紀前の1975年の論文において,ブラキシズム患者への Splint 装着

により睡眠中の筋活動量が低下する患者と不変の患者がいることが

記載されている。このことからもアプライアンスの治療ターゲットは,

ブラキシズム自体をなくすのではなく,

ブラキシズムをした際の筋活動量の低減にあると考えられる。

そこでブラキシズムをした際の筋活動量が小さくなる咬合接触を検討した。

中心位でのクレンチング時はすべての歯が接触しているので,変化は生じないが,

グライディングや偏心位でのクレンチング時の筋活動量は偏心位における

咬合接触によって大きく変化する。

筋痛障害患者に対するアプライアンスに付与する咬合接触としては,

ブラキシズム時の筋活動量を減らすという目的において,

アプライアンスにライズ部を設定し,犬歯部付近で接触させるというのが

有用と考えられる。

 

2.顎関節痛障害へのアプライアンスの応用

 

顎関節痛障害へのアプライアンスの治療ターゲットは,

顎関節への負荷の低減である。

戦略としては,咬合支持を確立することで顎関節への負荷を減少させることと,

後方偏位していることが多い下顎頭の位置の正常化を図ることである。

非復位性の円板前方転位では、下顎頭はやや後方に偏位しており,

神経血管に富む後部結合組織を圧迫していることが容易に推測される。

このような症例では,熱可塑性シートを圧接しただけの挙上量が低く

薄いアプライアンスの場合、咬合接触は傾斜面が多く,

咬合接触による顎位の誘導要素を完全に排除できないので,

関節の位置が変化しづらく痛みが継続することがある。

一方挙上量が高く咬合接触点がフラットなアプライアンスを使用すると,

咬合による顎位の誘導を排除でき,筋肉で決まる下顎位に収束し,

関節の位置が適切に変化しやすい。また挙上量が大きいことから関節接触面も

変化することも咬合時痛の早期解消に寄与していると考える。

 

咬合機能を決める要素は咬合接触,顎関節,咀嚼筋の3つであり,

この3つの要素の調和が重要である。いずれかの要素が障害された場合,

残りの要素を手がかりに咬合再建することになる。

顎関節が障害され,咬合接触も崩壊した場合,まず障害を受けた

顎関節に対して加療し適応を待つことになる。

そして適応した顎関節と,残りの要素である咀嚼筋との

バランスを確認しながら新たな下顎位を探ることになる。

関節の適応を待つ間にアプライアンスを夜間装着するが,

そのアプライアンス上の咬合接触の変化も顎関節の適応を診断する

重要なサインの1つである。

アプライアンス上には咬耗で小さなゴシックアーチが描けてきて,

アペックスにタッピングポイントが収束してくることが確認できれば

補綴学的視点から顎関節が安定したと考えてわれわれは次の治療に進んでいる。

また,アプライアンス療法も不適切に行われれば非可逆性の障害を起こしてしまう

可能性があるため,治療は常々慎重に行われるべきである。

 

ソフトスプリントは筋活動が増強されてしまうという報告もあることから,

臨床歯科において,顎関節症患者に対する初期治療法では,

一般的にハードタイプを用いるべきという意見が多い.このハードスプリントは,

レジン重合型のフラットテーブルタイプのスタビライゼーションスプリントが

広く用いられており,このスプリントを用いることによって,

顎位の安定が得られ,神経筋機構の乱れの抑制を行い,

咀嚼筋に対するフィードバックの影響の緩和や,

下顎頭偏位の修正,顎関節の保護などが,作用メカニズムとして考えられている。

 

 

 

歯の健康、美しさを保つには、

定期的なクリーニングがとても大切です

ぜひタニダ歯科クリニックで定期健診を。

ご来院お待ちしております。