西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

歯生え薬

こんにちは。訪問担当の岩本です。

 

歯を失った患者さんから、

「サメみたいに何度も生えてくれればいいのに」

という話を聞くことがあります。

全く同感です。

 

今回は「歯が生える薬」の

研究についてお伝えします。

 

 

 

 

無歯症という疾患があります。

名前の通り、

歯が生えてこない疾患です。

 

レントゲン上で親知らずが

見当たらないなど、

「永久歯が28本揃っていない」

といった部分的な無歯症は

珍しくありません。

 

胎生期の環境や薬物の影響など

様々な要因で起こり、

全人口の約10%にみられると

言われています。

 

無歯症の中でも、

遺伝的な原因により

多くの歯が欠如(6本以上)している

症例を先天性無歯症と言います。

こちらは約0.1%の発症率だそうです。

 

成長過程において、歯数が少ないと

食べる機能が損なわれ、

成長に悪影響を及ぼします。

 

また顎の骨が成熟する前の

幼少期から無歯症であるため、

義歯やインプラントでの対応が

困難です。

 

従来は成人後に

これらの治療を行うしか

方法がなく、

歯の再生治療の開発が

強く望まれていました。

 

 

2007年、

医学研究所北野病院

歯科口腔外科

髙橋克先生の研究チームは、

USAG-1というたんぱく質が

歯の成長を抑制することを

発見しました。

 

髙橋先生によると、人には

乳歯、永久歯に次ぐ

「第三の歯の芽」が存在し、

殆どの場合、成長に伴って

無くなってしまうと

考えられているそうです。

 

この歯の芽が無くなる過程を

抑制することによって、

新たな歯を獲得できる

可能性が生じるとのことです。

 

 

そこで、USAG-1が

体内で作られないようにする

治療薬を開発しました。

この治療薬

(抗USAG-1抗体「TRG035」)

を投与された実験動物においては、

歯数を回復させることができました。

 

 

 

 

2022年には動物に対して行う

前臨床試験が実施されました。

2024年9月からは、

人に対して初めて行う

First-in human試験が

約一年かけて実施される

予定であり、

北野病院、

トレジェムバイオファーマ株式会社、

国立研究開発法人日本医療研究開発機構の

産官学の連携によって準備が進められています。

 

この試験は薬剤の安全性確認を

主体としているため

無歯症患者ではなく、

わずかな欠損を持つ健常者が

対象とされるものです。

この試験後は、

先天性無歯症患者を対象とする

試験が行われ、

2030年の製造販売開始が

目標とされているそうです。

 

研究が進めば、歯を失っても

義歯を作らずに済む時代が

来るのかもしれません。