西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

腐骨とは?

こんにちは。歯科医師の西田です。
底冷えのする日が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今日は腐骨についてのお話を進めていきたいと思います。

腐骨というコトバに対し、皆さまどのようなイメージをお持ちでしょうか?
「骨が腐るなんて怖い」とか、「何かとんでもなく恐ろしい病気だろう」とか、「痛そう…」とか…。

Google で検索してみますと、「歯科における腐骨とは、歯や顎骨に関連して発生する骨の残骸や
壊死した骨片を指します。腐骨は、歯が生えたり、顎骨が壊死したりした際に発生することがある。」とあります。
腐骨の中には歯が生える際に、歯を覆っていた骨が吸収されずに残ってしまったものもあります(萌出性腐骨)。
「奥歯の上に何かついている」「生えかけの奥歯の上にある何かがカパカパ動く」などと
相談に来られる方もいらっしゃいます。
この場合、大人の歯が生え終わるまでに自然に取れることも多いようで、特に心配は要りません。

一方、腐骨の中には病的なものもあります。
う蝕、歯周病、抜歯などによる傷、義歯の傷などにお口の中の細菌が感染し、
歯肉の腫れ・痛み、出血、膿が出てくることがあります。
徐々に傷口が広がるように骨がむき出しの状態になります。(顎骨壊死)
こちらは、訪問歯科で時々目にする腐骨です。
顎骨壊死を発症する多くの場合、感染を引き起こしやすい以下のような要因があります。

① 糖尿病やステロイド治療による免疫力低下
② 癌の放射線治療をしたことがある。(照射野が顎骨に及んでいる場合、骨の血流低下で生じる)
③ 悪性腫瘍や骨に転移した癌や骨粗鬆症に対する薬剤(ビスホスホネート、デノスマブ等)を使用していた、
又は現在使用している。これらの薬剤は骨の吸収を抑制する働きがあり、
その作用によって顎骨壊死が生じうると考えられています。
ただし、ビスホスホネート製剤を服用しても必ず顎骨壊死を発症する訳ではありません。
10万人の人が1年間経口ビスホスホネートを服用すると、約1名に顎骨壊死が生じると言われています。
しかしながら、ビスホスホネートは骨に年の単位で沈着するので、
服用が長期に及べば顎骨壊死のリスクは徐々に上昇します。
ひとたび骨に沈着したビスホスホネートが半分に減少するまで2年~3年かかると言われており、
4年以上の服用で顎骨壊死のリスクが上昇し始めるという報告もあります。
またこれらの骨吸収抑制剤を悪性腫瘍の骨転移(転移性骨腫瘍)に対して使用した場合には、
顎骨壊死の発生率は100倍程度上昇するといわれています。
顎骨が壊死して腐骨が発生した場合、局所洗浄や抗菌薬・抗炎症薬の投与、腐骨の除去などによって治療します。
広範囲に壊死している場合は、顎骨の一部を切除したり、金属プレートで再建したりする必要があります。

このような事態を予防するためには、口腔衛生の改善と感染対策を徹底することが重要です。
気軽に相談できるかかりつけの歯科医師を持ち、歯科医院での定期的なメンテナンスを欠かさないようにしましょう。