2025/01/30
こんにちは。歯科医師の村重です。
私は日本摂食嚥下リハビリテーション学会
という学会に所属しており、時折学会や
その分野の勉強会に参加させてもらっています。
そこで、今回と次回に分けて、
歯医者さんの診療室ではあまり耳にしないこの
“摂食・嚥下”についてのお話をさせてもらおうと考えています。
摂食・嚥下とは、食べ物を認識してから、
口を経由して胃の中へ送り込む、一連の動作のことをいい、
この動作に支障を来すことを摂食嚥下障害と呼びます。
この障害を持った方に対して検査・評価をすることで
症状を客観的にとらえ、機能回復をはかるとともに、
その後の生活を考慮して食事の形態を検討し、
また、介助者であるご家族の方々にも
介助方法について提案を行い、より安全に
よりおいしく食べていただけるように援助していくことが
摂食・嚥下リハビリテーションの考え方です。
「食べる」という行為は、生命維持に必要な栄養を取り入れる、
味を楽しむ、食事の場面を通じてコミュニケーションを楽しむなど、
私たちの生活においてとても大きな意味を持ちます。
ご存知の通り我が国は超高齢社会を迎えており、
この「食べる」ことを安全に行えない方が増加しているのが現状です。
こういった状況に我々歯科医療従事者が口腔の専門家として
貢献できる部分は大きいと考えており、当院でも訪問嚥下診療を行っております。
ただ、摂食・嚥下リハビリテーションは歯科だけでは
絶対に完結することのできない分野です。耳鼻科領域を中心とした医師や、
普段のケアを行なっている看護師や介護士、また、
具体的な訓練の実施を行う言語聴覚士や食事の管理を行う
管理栄養士といった様々な職種の方々が、それぞれの専門性を生かして
ひとつのゴールに向かっていくという特徴があります。
普段の歯科診療ではあまり関わることのない他職種の方の考え方や立場を知り、
また新しい知識に触れたことで自分の臨床での訪問歯科診療、
および嚥下診療に還元できればと考えています。
では、摂食・嚥下障害の方にはどういった症状、特徴が現れるのかを以下に示します。
①むせる
特にむせやすいのは、味噌汁やお茶などの水分、
または水分と固形物の入り混じった食べ物です。
飲食物だけでなく、自身の唾液でも咳き込む場合があります。
②固形物を噛んで飲み込めなくなる
硬い食べ物はよく噛まないと飲み込めないため、
麺類などの柔らかいものや、噛まずに食べられるものを好むようになります。
その結果栄養が偏り、低栄養につながります。
③食事をすると疲れる、最後まで食べきれない
時間をかけてよく咀嚼しなければ飲み込めなかったり、
飲み込んでも口腔内に食べ物が残ったりするため、
食事に時間がかかるようになります。食べられるものも制限されるため、
食事自体の楽しみが奪われ、食べる意欲の低下につながります。
場合によっては食事の途中で肉体的・精神的に疲れてしまい、
出されたメニューをすべて食べきれないこともあります。
④食事の後、声がかれる
声質の変化も、よく見られる症状です。食べ物を飲み込んだあとに声がかすれたり、
口腔内に食べ物が残留することから痰が絡みやすくなり、
がらがらした声になったりします。
⑤体重が減る
食べる量が減る上、食事の内容が偏るため、低栄養状態になって体調を崩しやすくなり、
体重が落ちていきます。 こういったことがサインとなってきます。
次回は原因や診査方法といった内容を載せたいと思います。
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