入れ歯について(4)

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

入れ歯について(4)

こんにちは。
訪問歯科医師 阿部です。

今回のお話も「入れ歯について」です。

昔の人はどんな入れ歯を使っていたのか? についてお話ししたいと思います。

● ワシントンの入れ歯

アメリカの大統領ジョージ・ワシントンは歯が悪く、
28歳で部分入れ歯を使い始め、生涯で何個も入れ歯を作ったようです。
1789年に58歳で大統領になった時には、自分の歯は1本しか残っていませんでした。
彼は、牛やカバの歯を用いたもの、象牙の土台のもの、金属製のもの等、
色々な入れ歯を試していたという記録が残っています。

当時の入れ歯は上下がバネでつながっており、口を開ける時は、
バネの力で入れ歯が開くようになっていました。
反対に口を閉じる時は、バネに逆らって食いしばらなければ
ならなかったそうです。
有名な米1ドル札の彼の肖像画は、口をグッと引き締めた表情が印象的です。
これは、入れ歯が口から飛び出さないように口を閉めていたからと言われています。

●日本の入れ歯の歴史

では、我が国の入れ歯の歴史はどうだったのでしょうか?
実は、日本の入れ歯の歴史はもっと長く、ワシントンの時代よりもずっと前、
16世紀半ばには、「咬める入れ歯」が実用化していました。
木ロウで型をとり、ツゲの木などを彫刻して仕上げた「木製の入れ歯」です。
ツゲの木は緻密で硬く、抗菌作用もあり、入れ歯の台として最適だったようです。

この職人芸的な木の入れ歯は、明治時代まで用いられます。
最初は仏師の片手間の仕事から始まり、その後江戸時代には、「入れ歯師」と
呼ばれる専門職の仕事として定着したようです。

それにしても、昔は入れ歯に関しては日本のほうが進んでいたなんて、驚きですね。

さて、その後の入れ歯の歴史はというと・・・。

明治以降、西洋からゴム製の入れ歯が伝わり、木製の入れ歯は姿を消しました。
その後、アクリル樹脂が開発され、入れ歯は飛躍的に進化を遂げ、
現在のような素材に移り変わっていきました。

人間は昔から、歯が抜けると、それを補うためにいろいろ苦労して
工夫してきたのですね。

訪問歯科でも、義歯の修理、調整を行うケースはとても多いです。
新しく作成することも可能です。
歯がなくなっても、『しっかり咬んでおいしく食べる』ことを、
あきらめなくてよいのです。
入れ歯を作ってみようかな、というときは、ぜひご相談ください。