その薬、抜歯の前に止めなくて大丈夫?

タニダ歯科医院ブログ

西宮市の「タニダ歯科医院」がお送りするブログです。

その薬、抜歯の前に止めなくて大丈夫?

こんにちは。歯科医師の西田です。ゴールデンウィークが目前ですね。皆さまは長期休暇のご予定は立てられましたか?

さて、今日のお題は、「その薬、抜歯の前に止めなくて大丈夫?」です。以前は、抜歯の前に内科の先生に相談して、止めて頂くお薬がありました。しかし、この頃ではお薬を止めることによる弊害を防ぐために、止めずに抜歯をすることもあります。今日は、そのようなお薬、血液サラサラ薬についてのお話です。
血液サラサラ薬は抗血栓薬〈こうけっせんやく〉のことで、血をサラサラにしたり、血小板が働きにくくなるために血が固まりにくくする薬です。
血液サラサラ薬は、脳梗塞・心筋梗塞・不整脈・心臓手術後などの患者さんが予防や治療のために飲んでいます。大きく分けて、抗血小板薬と抗凝固薬(ワルファリン、または直接経口抗凝固薬DOAC:Direct Oral Anticoagulant)に分類されており、病気により使い分けられています。
抗血小板薬の商品名:
バイアスピリン®︎、バファリン81®︎、パナルジン®︎、チクロピジン®︎、プラビックス®︎、プレタール®︎、ペルサンチン®︎、アンギナール®︎、アンプラーグ®︎、エパデール®︎、ロトリガ®︎、ロコルナール®︎、ドルナー®︎、プロサイリン®︎、オパルモン®︎、プロレナール®︎、エフィエント®、ブリリンタ®
抗凝固薬の商品名:
ワルファリン®、プラザキサ®、イグザレルト®、エリキュース®、リクシアナ®
昔(1990年代まで)は、血液サラサラ薬を中止して抜歯するのが一般的でした。しかし、薬を中止した際に、脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクが高いことがわかりました。
そのため、現在は基本的に、血液サラサラ薬を中止して抜歯(口腔外科処置)することはありません。最新のガイドライン(抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2020年版)にも、その内容が記載されています。
抗凝固薬のワルファリンという薬を飲んでいる方は、抜歯の直前に採血して、血のサラサラ具合を確認(PT-INR)する必要があります。最新のガイドラインでは、各疾患のPT-INR至適治療域の記載があります【非弁膜症性心房細動:1.6-2.6(70歳未満)、2.0-3.0(70歳以上、人工弁:2.0-3.0、静脈血栓・塞栓症:1.5-2.5】。
しかし、その他の血液サラサラ薬にはそのようなサラサラ具合を確認する指標がないため、歯科医師の判断となります。不明な点は担当の歯科医師にご確認ください。
かかりつけ歯科医院での抜歯が難しい場合(手術の設備、基礎疾患の管理、他の内服薬との飲み合わせ等)は、総合病院や大学病院の口腔外科で抜歯を行うことになります。
以下、血液サラサラ薬を飲まれている患者さまへのお願いです。
・歯科受診時に、飲んでいる血液サラサラ薬の名前を全て伝えましょう。
血液サラサラ薬を2種類以上飲んでいる場合はさらに注意が必要になります。また薬(DOAC)によっては、抜歯する時間帯を調整する必要があります。
・かかりつけ医科の病院名と先生の名前を伝えましょう。
・その他にも飲んでいる薬や治療している病気があれば全て伝えましょう。糖尿病や肝機能、腎機能障害などがある場合はさらに注意が必要になります。
・患者さんご自身の判断による薬の中止は危険のため、絶対にしないでください。
医療技術の進歩、新薬の登場と共に、医科と歯科の連携も進んできています。私たちは、皆さまの治療にあたって、医科の先生方とも連絡を取り合っています。今後も安心して治療を受けて頂きたいと思います。