2024/06/20
こんにちは。訪問歯科医師阿部です。
訪問歯科への依頼の中には、
「入れ歯が痛い」「入れ歯が落ちる」「入れ歯をなくした」「入れ歯がわれた」
等、入れ歯に関するご依頼がたくさんあります。
今回から数回に分けて、入れ歯についてのお話をしようと思います。
お伝えしたいことがたくさんあるのですが、今回は特に、入れ歯の必要性についてお話ししたいと思います。
人生100年時代。長い一生自分の歯がしっかり残っていればいいのですが、なかなかそうもいかず、高齢になると虫歯や歯周病の進行などによりやむを得ず次第に歯を失ってしまいます。そんな時に入れ歯(を入れること)は、失った歯を補う大切な方法の一つです。
では、歯が抜けたまま放っておくとどうなるでしょうか?
・咬む力が落ちて良く咬めず、胃腸の調子が悪くなるでしょう。
・息が漏れて上手く発音できず、おしゃべりがしにくくなるでしょう。
・歯が抜けたところの隣の歯が倒れてきたり、噛んでいた相手の歯が伸びてきたりして、歯並びが悪くなり、磨きにくいため虫歯や歯周病になりやすなります。
・咬み合わせが徐々に悪くなり、あごの関節まで痛めることがあります。
・口元にしわができたり、頬がくぼんだりして老けて見えるかもしれません。
…困ったことがたくさん起こりますね…。歯は抜けたままにしないようにしましょう。
さらに最近では、しっかり咬める入れ歯を入れることで、認知症のリスクが下がることや、転倒のリスクも下がることも、わかってきています。
高齢者の生活の質(QOL)の維持、向上に入れ歯はとても重要な役割を持っているのです。
今回は入れ歯の必要性についていろいろ挙げましたが、なんといっても「しっかり咬めておいしく食事ができること」は、人間生活の中でとても重要かつ大切な要素です。歯を失ったご高齢の方が食べる楽しみを得るには、しっかり機能する入れ歯が必要です。
私も歯科医師として、ご高齢の方の「食べる楽しみ」を守るべく、ますます精進してまいりたいと思います。
2024/06/13
こんにちは。歯科医師の法貴です。
急に暑い日が続いていますが、
体調は崩していないでしょうか?
今回は口腔機能低下症についての話になります。
口腔機能低下症は、う蝕や歯の喪失など従来の器質的な
障害とは異なり、複数の口腔機能の低下による
複合要因によって現れる病態です。
適切な管理と動機づけを行うことで、
さらなる口腔機能低下の重症化を予防し、
口腔機能を維持、さらに回復することが可能となります。
口腔の機能低下を経由して、
全身の機能低下が進行する過程の概念が初めて示され、
口腔の機能低下はオーラルフレイルと表現され,
身体的フレイルの予防には口腔機能の維持が
重要であることが強調されています。
口腔機能低下症を診断するための口腔機能精密検査の
項目としては、
①口腔衛生状態不良②口腔乾燥③咬合力低下④舌口唇運動機能低下
⑤舌圧低下⑥咀嚼機能低下⑦嚥下機能低下
の7つの項目がある。
そのうち3つの項目が該当した場合,
口腔機能低下症と診断します。
今回は当院でも実施している項目を紹介します。
1口腔衛生状態不良
舌苔スコア
Tongue Coating Index(TCI)を用いて、
舌苔付着程度の計測を行います。
視診にて評価エリアの舌背を9分割し、
舌苔の付着程度を3段階(スコア0 1 2)で評価する。
TCIが50%(9/18)以上の場合,
口腔衛生状態不良と評価します。
2口腔乾燥
口腔粘膜湿潤度検査
口腔水分計ムーカス®を用いて、
舌から10mmの位置でセンサー部を圧着し計測を行う.
3回計測を行い,中央値が27.0未満の場合,
口腔乾燥と評価します。
3咬合力低下
残存歯数
口腔内診査により,保存不可(残根や動揺度3)
の歯を除いた残存歯が20本未満の場合,
咬合力低下と評価します。
4舌口唇連動機能低下
「毎日パタカラ(サンスター)」等を用いて、
pa/ta/ka/をそれぞれ5秒間連続して発音し、
計測を行います。(オーラルディアドコキネシス)。
1秒あたり 6回未満の場合、
舌口唇運動機能低下と評価します。
5舌圧低下
JMS舌圧測定器を用いて、
舌圧プローブのバルーンを舌で押し潰し、
3回計測を行い,最大舌圧の平均値が
30kPa未満の場合,低舌圧と評価します。
6嚥下機能低下
聖隷式嚥下質問紙
摂食・嚥下に関する15項目の質問に対して、
3段階(A~C)で回答し、
Aの項目が1つ以上ある場合、
摂食・源下障害の疑いありと評価します。
何かわからないことがあればいつでも相談してください。
2024/06/06
こんにちは。訪問担当の岩本です。
今回はとろみ剤の話をします。
とろみ剤とは、
嚥下障害がある方の飲食物に混ぜて粘度を調整するための製品です。
「嚥下障害」とは、
食べ物や飲み物を飲み込む際に困難を感じる状態を指します。
嚥下障害があると
誤嚥(飲食物が誤って気管に入ること)が発生しやすくなり、
窒息や肺炎の原因となり得るため、出来るだけ避けなければなりません。
毎日の食事にとろみ剤を使用することで、
適度な粘度を与え、嚥下がスムーズになり、誤嚥のリスクを低減することができます。
とろみ剤には、
主に以下のような特徴があります。
1. 粘度の調整
とろみ剤は、食べ物や飲み物の粘度を細かく調整することができます。
例えば、水のような流動性の高い飲み物にとろみ剤を加えることで、
ジュースやスープ、ペースト状に変えることができます。
これにより、飲み物が喉を通過する速度が遅くなり、嚥下しやすくなります。
2. 使用の簡便さ
とろみ剤は、粉末状や液状の形態で市販されており、使用が非常に簡便です。
粉末状のとろみ剤は、飲み物や食べ物に混ぜるだけで粘度を調整でき、
液状のものも同様に簡単に使用できます。
また、即座に溶けるため、食事の準備に時間がかかりません。
3. 安全性と味への影響
とろみ剤は安全性が高く、日常的に使用しても健康に影響を与えることはありません。
また、多くのとろみ剤は無味無臭であるため、
食べ物や飲み物の味を変えることなく、自然な状態で嚥下を助けることができます。
4. 適用範囲の広さ
とろみ剤は、飲み物だけでなく、スープやソース、デザートなど
さまざまな食品に使用できます。
また、固形食を嚥下しやすい状態にするために、ピューレ状にする際にも利用されます。
5. 栄養の保持
嚥下障害があると、栄養を充分に摂取することが難しくなることが多いです。
とろみ剤を使用することで、栄養価の高い飲食物を安全に摂取できるようになり、
栄養状態の改善にも寄与します。
このように、とろみ剤は嚥下障害者の生活の質を大いに向上させる重要なツールです。
ですが、注意すべき点もあります。
薬を服用する際、さらさらの水ではむせるからと
とろみ剤入りの水で服用すると、
薬が体内で消化分解されずに排出されてしまうことがあります。
※岩手医科大学薬学部のHPよりお借りしました
これでは薬の効果が期待できなくなるため、
服薬時にはとろみ水ではなく、服薬ゼリーの使用など
別の方法を選ぶ必要があります。
高齢者施設などでは食事の際に提供された
とろみ水でそのまま服薬することもあると思います。
薬効に影響しない、新しいとろみ剤の開発が待たれるところです。
2024/06/04
こんにちは、院長の谷田です。
6月に入り雨模様が続くこの時期は、
なんとなく気分がすぐれない日も
あるかもしれません。
そんな気だるさから、
普段は当たり前に行っている習慣を
疎かにしてしまうと、
健康状態が悪化するリスクを
招くことがあります。
そのリスクのひとつが「歯石」です。
日々の歯みがきが不十分だと
歯に付着した歯垢(プラーク)が
やがて歯石となり、
色々な害を引き起こします。
中には
「歯石を自分で取り除いている」
という人もいるかもしれませんが、
この行為は効果が無く、
むしろ危険を伴うため注意が必要です!
◆毒性があるのは歯石ではなく、
歯石につく◯◯!
歯石とは、
歯の周囲に溜まった
細菌の塊である歯垢(プラーク)が
だ液に含まれるミネラル成分によって
石のように硬くなり、蓄積したものです。
歯石には大きく分けて、
目に見える黄白色の
「歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)」と、
歯ぐきの下に隠れている、黒っぽい
「歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)」があります。
この歯石自体に毒性はありませんが、
お口の健康のためには
取り除くことが必須です。
その理由は、
ざらざらした歯石の表面が
細菌の繁殖にはうってつけの環境であり、
この細菌が、歯や歯ぐきに
悪影響を及ぼしてしまうからです。
◆歯石を放置するとこんなことが…!
細菌だらけの歯石を
除去しないまま放置すると、
やがて歯周病が悪化する
原因となります。
歯石の表面の凹凸に入り込んでいる細菌は、
通常の歯みがきでは完全に除去できません。
その結果、歯石がついた周囲の歯ぐきで
炎症が起こって腫れてしまい、
歯と歯ぐきの間のみぞ(歯周ポケット)が深くなります。
この環境下で歯周病菌が増えることで、
歯周病が悪化していきます。
さらに、歯周病菌は
悪臭を伴うガスを放つため、
口臭も強くなってしまいます。
これらを回避するためには、
細菌のすみかとなる歯石を
早めに取り除くことが肝心です。
◆絶対やめた方がいい…
自分で歯石を取る危険性とは?
歯石を早く取ったほうがいい、となると、
「自分で歯石を取ってしまおう!」
と考える人もいるかもしれません。
しかし、自分で歯石を取ろうとすると
歯や歯ぐきを傷つけることになり、
歯石を全て取ることも不可能です。
また、取り残された歯石に付着した細菌は、
変わらず毒素を出し続けるため、
歯周病や口臭が確実に悪化します。
このように逆効果にしかならないため、
自分で歯石を除去する
メリットはありません。
これらの理由から、
歯石を自分で取ることは絶対に避けましょう。
◆歯石の害、どうしたら食い止められる?
歯石への最善の対処法、
それはズバリ、
「定期的に歯科医院で取ってもらうこと」です。
歯石は一度取った後も、
お口の中のプラークが再び歯石となり、
繰り返し付着してしまいます。
そのため、一般的には
3~6か月に一度のペースで
定期的に歯石取りに通い、
きれいな状態を保つことをおすすめします。
お口の悩みのタネとなる歯石を
歯科医院で安全かつきれいに取り除き、
健康な歯ぐきを維持していきましょう!
タニダ歯科医院
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