2023/03/30
こんにちは。歯科医師の西田です。
医院近くの桜並木が満開になりました。
お花見等計画されている方もいらっしゃるでしょう。
久しぶりに人が集まって宴会の始まりそうな今季のお花見。
宴会時に大笑いして顎が外れた祖父のことを思い出してしまいました。
今日は、顎の脱臼についてお話しします。
顎の関節は、両耳の前方にあり、
上顎の下顎窩と呼ばれる骨の凹みに、下顎骨の頭が入っています。
口を開けると、下顎骨の頭が前方に動きながら回転します。
下顎骨の頭が正常な運動範囲を大きく逸脱して、
自力で元の場所に戻れなくなった状態を、顎関節の脱臼といいます。
あくびをしたり、お食事の際に大きく口を開けると、
まれに顎が外れてしまうことがあります。
それが癖になり、
脱臼が、ちょっとしたことで何度も起こってしまう病気を、
習慣性脱臼と呼びます。
では、どのような人が、顎を脱臼しやすいのでしょうか?
なりやすい年齢は若年者と高齢者、
なりやすい性別は女性と言われています。
では、どのような症状が現れるのでしょうか?
口が閉じられないため面長の顔となり、
上下の唇が閉じられなくなります。
顎の関節付近に痛みや緊張感がみられ、
耳の前は陥凹し、
その1〜2cm前方が隆起します。
そして、唾液がうまく飲み込めないため、
ヨダレとなってこぼれます。
長期間(4週間以上)経過した脱臼は、
関節周囲の組織等が固まってしまうため、整復が困難になります。
では、顎が外れた時、どのような治療をするのでしょうか?
まずは、術者が顎を動かしてもとに戻します。
もとに戻したあとは、再度の脱臼を予防するため、
大あくびをしない、食べ物は一口大以下に刻むなど、
生活に気をつけていただきます。
もとに戻した後にすぐに再度脱臼する方には、
口が開かないようにテーピングやバンデージなどの予防処置をします。
数週間~数ヶ月の間、
お口を大きく開けないように生活して頂いても、脱臼を繰り返される場合、
又は術者が手で脱臼を治そうとしても元に戻らない場合、
手術が必要なこともあります。
手術以外にも、自己血を関節内に注射して
顎関節の組織を固めてしまう方法をとることもあるようです。
以上、顎関節の脱臼のお話をさせていただきました。
昔は珍しい病気と言われていた習慣性の顎関節脱臼も、
超高齢化社会となった現在では、
老人ホームなどで、時折見られるようになりました。
訪問先で整復させていただくこともありますので、
高齢のご家族のいらっしゃる方もご安心ください。
2023/03/23
こんにちは!歯科医師の法貴です。
桜もちらほらと咲き始め春が近づいてきていますね。
これから新生活が始まる方も多いかと思いますが
体調管理はしっかりしてよいスタートきれるようにしてください!
今回は口腔機能発達不全症についてお話ししたいと思います。
健全な口腔機能は、他の身体機能と同様、
乳幼児期に大部分の基本的な機能を獲得します。
この時期の機能の獲得を阻害する因子を早期に発見して除去することは、
健全な歯並び、噛み合わせ及び
顎顔面部の形態的成長と口腔機能の発達に必要不可欠です。
口腔機能の発達を阻害する4つの因子
(虫歯 口腔習癖 構音機能と舌小隊の異常
離乳から咀嚼機能獲得の過程における問題)についてお話しします。
虫歯は離乳完了後も母乳の授乳や哺乳瓶の使用が継続している場合には、
上の前歯に広範囲の虫歯が発生し、その後子供の奥歯にも波及します。
子供の前歯の歯の崩壊は、前歯による咬断や構音機能獲得の障害になります。
子供の奥歯の歯の崩壊をともなう重症の虫歯は、
奥歯の噛み合わせの関係の喪失や痛みによる偏咀嚼や、
固い食品を避けるような偏食の原因となるため、
早期の対応が必要になります。
次に口腔習癖についてです。
安静時に口唇を閉鎖した状態では、
上下顎の歯並びに対して舌は内側から、
また唇の筋肉及び頬の筋肉などの口腔周囲の筋肉は
外側から緩やかに圧力を加えています。
成長期においては、内外の筋肉の圧力の均衡したスペースに
歯が萌出し配列することにより、
歯列や歯茎の形態、さらに噛み合わせの状態が決定します。
指しゃぶりに代表されるような小児の口腔習癖は、
歯並びや顎の骨の成長方向に重大な影響を及ぼす
口腔周囲の筋肉の力学的バランスを見出す最大の因子となります。
口呼吸には鼻性口呼吸、歯性口呼吸、習慣性口呼吸があります。
鼻性口呼吸は鼻疾患による鼻閉が原因です。
歯性口呼吸は歯並び、噛み合わせの異常により口唇閉鎖が困難な状態です。
小児期で早期に対応が必要な口呼吸は、鼻閉や歯並び、
噛み合わせの異常を伴わない習慣性口呼吸です。
習慣性口呼吸は、放置すれば歯並びや顎の骨の成長方向に影響するため、
骨格性不正咬合の原因にもなります。
何かわからないことがあればいつでもタニダ歯科医院に来院してください。
2023/03/20
院長の谷田です。
当院の訪問診療のメニューの中に摂食嚥下診療があります。
どのような診療か簡単に解説します。
最近ではテレビの訃報なので誤嚥性肺炎で亡くなられたという報道を目にされたことがあると思います。近年誤嚥性肺炎の件数は非常に増加しています。
では実際に現場では。
例えば施設に入所されている方が誤嚥をされます。
救急搬送で病院へ。
病院での診断で誤嚥が確認されると胃ろうの処置がなされます。
*胃ろうとは腹部に開けた穴からチューブを通し、直に胃に食べ物を注入する処置です。
施設に戻ってきた方を見て、本人はもちろん家族も「昨日まで口から食べていたのにもう食べれないのか、何とかしてもう一度口から食べれないのか」という相談が寄せられます。
そこで当院の出番です。
まず誤嚥を起こした原因を探ります。服用しているお薬に原因がある場合もあります。
つぎに嚥下内視鏡を使って(鼻から入れます)喉頭の様子を観察します(VE検査)。
普段実際に食べているものを食べてもらって、食べ物が気管に入っているかどうか直接に観察します。
直に観察するので一目瞭然です。
咽頭
結果、実際に口からの摂取も無理な場合もありますが、かなり多くのケースでは再び口から食べれるようになります。
もちろんそれには、本人と家族、そして施設の方との綿密な連携が必要です。
【医院からのお知らせ】
*施設の方やご自宅で摂取嚥下でお困りの時はお気軽に当院にご相談ください。
タニダ歯科医院
〒669-1133 兵庫県西宮市東山台1-10-5
TEL:0797-61-2000
URL:https://www.tanidashika.jp/
Googleマップ:https://g.page/r/CUn1zmeIAnWtEAE
2023/03/16
こんにちは。
訪問診療担当の岩本です。
訪問診療は、何らかの理由で外部への通院が困難な方に対して行われます。
多くの患者さんはいくつかのご病気を抱えておられますが、
様々な基礎疾患の中で今回は、
心疾患を持つ患者さんの歯科治療時の注意点についてお伝えします。
心臓は、全身に血液を送り酸素や栄養を供給するためのポンプとして
毎日毎日、休むことなく働いています。
心臓の機能が低下すると、全身にうまく血液が送られなくなり
生命維持に直結する問題が生じます。
心疾患とは、心臓に関わる疾患の総称です。
そのため、心疾患を基礎疾患として抱える患者さんの歯科治療の際には、
歯科医師はかかりつけの医師に病状の問い合わせを行ったり、
歯科治療の計画についての助言を求めるなど、細心の注意を払っています。
注意点の具体例を挙げます。
狭心症や心筋梗塞の方の場合、
抗血栓療法(血液サラサラの薬など)が行われていることがあります。
このような場合、抜歯などの処置の後で出血が長引くことがあるため、
処方されている薬の種類を確認し、必要に応じて服薬の調整を検討します。
また、歯科治療に対する不安や疼痛によって交感神経が興奮し、
狭心症発作が引き起こされることもあるため、
処置前には麻酔をしっかり行い、痛みを極力取り除くようにします。
心臓ペースメーカーを装着されている患者さんにおいては、
歯科治療中に使用する電気メスなどが
ペースメーカーの動作に影響を及ぼすことがあるため、
問診時に装着していることをお知らせいただく必要があります。
心臓弁膜症を抱えている患者さんの場合は、
歯科治療に伴う出血には特に注意が必要です。
出血時に傷口から入り込んだ細菌が体内をめぐり、
心臓の弁や心内膜に細菌の塊が出来てしまう
「感染性心内膜炎」を引き起こす可能性があるからです。
これは命に関わる重篤な疾患です。
治療の前にあらかじめ抗菌薬を投与する、
また口腔内の細菌を減らすためのクリーニングを行っておくなどの
準備が必要とされます。
ところで、歯周病は、細菌の起こす炎症によって
歯肉や歯槽骨が破壊される疾患ですが、
炎症反応時に放出される炎症物質が血管に作用することで、
動脈硬化や冠状動脈疾患などの心疾患リスクを高めることがわかっています。
そのため、歯周病の予防や早期治療は、心疾患の予防につながるとされています。
患者さんと歯科医院との間で情報を共有することはとても重要です。
情報を基に適切な治療方法を選択することで、
安全かつ効果的な歯科治療の実現が可能となります。
2023/03/09
こんにちは、豊原です。
もうすぐ春の訪れがやってきますね!
この季節、毎年のことですがやはりソワソワした気持ちになります。
この春、卒業される皆様、新たなステージに旅立つ皆様、
おめでとうございます!
期待と不安が入り混じったお気持ちでいらっしゃると思いますが、
自分を大切にしながら一歩一歩頑張ってください。
さて今回も睡眠時無呼吸症候群の第三弾です。
今回は治療について書きたいと思います。
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、
各症例によって次のような治療が行われます。
器質的にアデノイドや扁桃肥大、鼻中隔彎曲症などの
異常が原因となっている場合は、外科手術の適応となり、
扁桃摘出術や軟口蓋、口蓋垂の形成術が行われることがあります。
これにより、気道の入り口を拡げることができ、
就寝時呼吸の改善が見込まれます。
手術回避の手段としては、
持続陽圧呼吸療(CPAP;continuous positive airway pressure)
という睡眠中に小型の機械から送られる陽圧空気を
鼻マスクから吸わせることで気道を広げつつ、
空気を効率よく送り込む装置を用いる方法があります。
睡眠ポリグラフ検査で睡眠時1時間あたりに
無呼吸や低呼吸になった回数が20回以上で、
なおかつ日中に眠気などを自覚しているケースが適応となり、
この治療を行うことで、心筋梗塞や脳卒中などを発症する
危険性を低下させる効果があります。
歯科との関わりでは、下顎を前方に移動させるような
口腔内装置(OA;oral appliance)を用いた治療があります。
これは先のCPAPと並び、よく用いられる方法です。
閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)のおもな原因には、
肥満や顎顔面骨格、舌位の異常があります。
精密検査の結果、歯科領域に原因があると診断された場合に
OAが導入されます。OAを用いると、OSA時によくみられる
口が開いた状態(開口)で起きやすい気道狭窄を防止し、
呼吸形態を鼻呼吸にすることができます。
また、下顎が前方に移動することで、下顎に付着する
舌骨上筋群が緊張し、舌筋と軟口蓋をつなぐ口蓋舌筋も
緊張して軟口蓋も前方に牽引され気道閉塞が予防されます。
しかし、OAにも副作用があり、歯牙位が変化したり、
咬合の変化、夜間に装着するため口腔内細菌の増加に伴う
う蝕や歯周病の悪化が挙げられます。
OA導入後は一定期間経過観察後にもう一度診断元の医院にて
その効果判定を行い、効果不十分であればCPAPなどの
他の治療の併用が考慮されます。
睡眠時無呼吸症候群の多くは肥満によるものであるため、
たとえCPAP療法などを行っていたとしても、減量を目指した
食生活の改善や運動習慣の定着などの生活習慣の見直しが大切です。
医科歯科連携での長期的なフォローが必要となりますので、
それぞれのかかりつけ医で気になることあれば、
遠慮せず伝えてください。