2020/12/03
こんにちは、川村です。
12月になり寒くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今回は、知覚過敏症について書いていきたいと思います。
象牙質知覚過敏症(Hypersensitive Dentin (Hys))のことで、歯ブラシの毛先が
触れたり、冷たい飲食物、甘いもの、風にあたった時などに歯に感じる一過性の
痛みで、特に齲蝕(虫歯)や歯の神経(歯髄)の炎症などの病変がない場合にみ
られる症状を言います。
歯というのは、表面をエナメル質という組織で覆われています。
しかし、エナメル質という組織は歯の全周を覆っているわけではありません。
エナメル質の下には象牙質という組織があります。
この象牙質ですが、エナメル質とは違いがあります。
有機質・無機質の割合、硬度など違いは多数ありますが、今回のことで言えば、
細管の存在です。
象牙質には、象牙細管(象牙質にある細い管)があります。
この象牙細管は歯髄(歯の神経)の所までつながっています。
つまり、この象牙細管に刺激が伝わってしまうと神経が感じてしまいしみてしま
うのです。
ちなみに、エナメル質には細管はありません。
通常、象牙質はエナメル質に覆われているので、こうした痛みを感じることはあ
りませんが、極端に冷たいものなどではエナメル質の上からでも温度が内部の象
牙質に伝わって、歯が痛みを感じることもあります。
しかし、様々な理由で象牙質が露出すると、刺激が神経に伝達されやすくなり、
知覚過敏が生じるようになります。
象牙質が内部の神経にまで刺激を伝えるのは、象牙質の中にある無数の小さな管
状の構造物があることによります。
この小さな空隙は加齢などにより、少しずつ塞がってくることもあります。
このような場合には知覚過敏は起きません。
したがって象牙質が露出している時には必ず知覚過敏が起きるということではあ
りません。
歯肉が退縮して歯が長く見えてしまった高齢の方全員が、しみる症状があるかと
いうと・・・、ないですよね。
1.歯肉退縮
歯肉の位置は加齢とともに少しずつ下がってきます。
それに伴って歯根が露出し、象牙質がむき出しの状態になります。
このような象牙質表面では、歯ブラシが触れたり、温度変化などの刺激で痛みを
感じることがあります。
持続時間は長くても1分以内で、時間が経てば痛みは消失します。
歯の表面に歯石がたくさん付いているような場合、それを取り除いた時にも同様
の状態となり、歯石をとっている時にも器具が象牙質表面に触れたり、水をかけ
て処置をするので、知覚過敏と同様の痛みを感じることがあります。
2.破折
歯が破折してしまい象牙質が露出することがあります。
破折時には、残っている歯に亀裂が入っていることもあります。
亀裂の状態にもよりますが、歯の神経の部分にまで細菌が侵入して炎症を起こす
こともあります。
3.摩耗、酸蝕症による象牙質露出
摩耗、酸蝕によりエナメル質がなくなると象牙質が露出します。
すり減り具合により症状が出る場合があります。
1.知覚過敏用歯磨きの使用
歯の神経の周囲をカリウムイオン(K+)が多く取り巻いていると神経の細胞が興
奮しにくくなるということを利用し、硝酸カリウムという成分を配合した歯磨き
剤を継続使用していきます。
2.知覚過敏抑制剤の塗布
露出した象牙質の内部の小さな空隙を、歯と同じような成分の結晶や、その他
様々な物質で封鎖することで、歯の神経への刺激の伝達が遮断されて伝わりにく
くなります。
3.露出した象牙質の被覆
知覚過敏のある象牙質表面を樹脂やセメントで被覆します。
4.抜髄
知覚過敏は一過性の痛みですが、痛みの持続時間が比較的長いような場合や、
その痛みが非常に激しい場合には、歯の神経を取ることもあります。
もちろん虫歯が原因で歯がしみることはあります。
気になる方は早めに診てもらいましょう
2020/11/26
こんにちは。歯科医師の村重です。
季節もそろそろ秋から冬へと移り変わり、肌寒くなってきました。
今年は新型コロナウイルスの影響であまり季節感を感じるタイミングもないですが、
インフルエンザも増えてくる時期ですので、より一層体調にはお気をつけください。
ところで、皆さんはタバコと歯科の関係についてご存知でしょうか。
タバコは害だ、タバコは身体に良くない、ということは、誰でも知っていますし、
喫煙者も含めて、誰もが認識していることと思います。
しかし、本当のことを理解する必要があります。
タバコの煙の中には、約4,000種類の化学物質が含まれ、
そのうちの約200種類が有害物質で、発がん物質が約70種類と言われていています。
さらに、タバコは、喫煙者だけの問題ではなく、
タバコから吸い込んだ主流煙を喫煙者が吐き出す呼出煙と副流煙からなる受動喫煙により
不特定多数の健康までにも悪影響を与える点、
さらに「タバコを消した後にも残っている煙による汚染、
残留タバコ成分による健康被害、三次喫煙による健康被害」までも留意する必要があります。
今までは、タバコは嗜好品で、喫煙は単なる習慣で、
本人の「意思」の間題であるとみなされていました。
しかし、現在では、タバコが止められないのは、
心理的依存とニコチン(依存性薬物)に対する身体的依存(ニコチン依存)より成り立つ
「ニコチン依存症(薬物依存症の一つ)」という精神疾患として認識されています。
医科では、このニコチン依存症に対して、
合同9学会による禁煙ガイドライン(2005年12月発表)に基づく禁煙治療が
2006年4月より一定の条件を満たした医療機関では保険診療可能となっています。
すなわち、タバコを吸うことは病気、
「ニコチン依存症とその関連疾患からなる喫煙病」という全身の病気で、
「喫煙者は積極的禁煙治療を必要とする患者」という考え方が基本になります。
タバコの煙が最初に通過するお口(口腔)は、
喫煙の悪影響が最初に貯留する器官になります。
すなわち、お口(口腔)に貯留、通過する煙による直接的影響と血液を介した間接的影響の双方が関わります。
タバコの煙の影響は、歯肉や口腔粘膜の上皮の厚さやその直下の粘膜下組織に分布する血管の分布度に依存します。
一般的に、歯肉は硬く角化し、口腔粘膜の上皮は、口腔底、舌の下、口唇、
歯槽粘膜(歯肉の下の部分)で薄く、硬口蓋(上顎内側)や舌背(舌の側面)で厚くなっています。
特に、口腔底粘膜は、物質透過性が高く、薬剤の迅速な吸収を期待して、
薬剤の舌下錠が使用されていることから、タバコの煙の影響を受けやすいことになります。
次回は、タバコが与える歯周組織(歯茎や歯を支える骨など)への影響について詳しく紹介したいと思います。
2020/11/19
こんにちは。
歯科医師の今泉です。
寒い季節に突入しましたね。
最近歯周病と認知症についての研究結果が発表されました。
以下記事を参照します。
歯周病菌が体内に侵入し、認知症の原因物質が脳に蓄積して記憶障害が起きる仕組みを
九州大などの研究チームが解明した。歯周病と認知症の関連は近年注目を集めており、
認知症対策につながる発見という。
認知症の7割を占めるアルツハイマー病は、
「アミロイドベータ(Aβ)」などの異常なたんぱく質が長年、少しずつ脳に蓄積し、
発症や症状の進行につながるとされる。
近年、歯周病の原因菌やその毒素が血管を通じて体内に侵入することで、
Aβが体内でつくられ、脳に蓄積することが解明されてきたが、
蓄積の仕組みは詳しく分かっていなかった。
九大や北京理工大(中国)などの研究チームは、マウスの腹の内部に3週間、
歯周病菌を直接投与して感染させ、正常なマウスと比較した。
その結果、歯周病菌に感染したマウスの脳血管の表面では、
Aβを脳内に運ぶ「受容体」と呼ばれるたんぱく質の数が約2倍に増えていた。
脳細胞へのAβの蓄積量も10倍に増えた。
暗い部屋に入れば電気ショックを受けることを学ばせた記憶実験では、
正常なマウスは5分間、明るい部屋にとどまり続けたが、
感染マウスは約3分で暗い部屋に入ってしまい、記憶力低下が裏付けられた。
一方、Aβを運ぶ受容体の働きを阻害する薬剤を使えば、
感染した細胞内を通るAβの量を4割減らせることも確認できたという。
チームの武洲(たけひろ)・九大准教授(脳神経科学)は「歯周病菌が、
異常なたんぱく質が脳に蓄積することを加速させてしまうことが明らかになった。
歯周病の治療や予防で、認知症の発症や進行を遅らせることができる可能性がある」と話す。
とあり、歯周治療の重要性がわかります。
歯周病は認知症だけではなく、糖尿病の悪化や全身疾患への影響も報告が上がっております。
歯周病検査治療は是非タニダ歯科へ!!
2020/11/12
こんにちは。歯科医師の法貴拓也です。
日が暮れるのも早くなり徐々に寒くなってきました。
インフルエンザと新型コロナウイルスに気をつけながら2020年残り2ヶ月過ごしましょう。
今回は前回の睡眠呼吸障害の続きです。
睡眠呼吸障害の治療の流れは下記の図のフローチャートに示されています。
睡眠呼吸障害患者に認められる症状として、口腔内症状は
①歯ぎしり 咬耗②逆流性食道炎による酸蝕症③幅の狭い上顎/高口蓋④舌側面、頬側面の圧痕
⑤不正咬合 歯列不正⑥歯頚部欠損 歯肉退縮等があります。
一般症状は①嘔吐反射の喪失②頭痛(とくに起床時)③口呼吸習慣④口腔顔面痛
⑤舌突出癖⑥下顎が小さい等があります。
医科における睡眠呼吸障害の診断を踏まえ、医師がOAを必要であると判断した場合、
歯科医師は医師からOA製作の依頼を受けます。OAを保持するために必要な歯数、
口腔内のスペース、顎関節症の有無等を確認した後、OAが適応であれば、印象採得及び咬合採得へと進みます。
咬合採得は一般的に最大前方位の25〜75%の間で調整していきます。
OAを調整した後でも下顎位の位置を変更することも可能なので、
症状にあわせて適宜対応していくことになります。
OAの種類は下図に示します。
使用されるOAに求められる条件は①下顎位の調整が可能であること
②臼歯部の支持があること ③歯列全てを覆うものであること④下顎を左右にある程度動かせること
⑤口唇を閉じることができ鼻呼吸を促すことができること⑥舌が収まる空間を確保できること等があります。
OAの選択は、歯列の状態、口腔内のスペース、筋突起の位置等を考慮し判断します。
咬合の変化を防止するための方法として、熱可塑性樹脂のアクリル板を噛んでもらい、
OA装着前の咬頭嵌合位を記録し、毎朝OAを外した後に、
数十秒間それを噛んでもらう方法と就寝中に下顎が前に出ることで
伸長した外側翼突筋が緊張してしまうため、それをリラックスさせる目的で、
毎朝1分間ほどそれに適した運動を行う方法があります。
その他、必要に応じて医師と連携し、就寝衛生の向上や減量など生活習慣の改善に向けた指導も行います。
就寝衛生の内容としては、適切な枕や他の寝具の選択、就寝中に気道が確保できる体位、
寝室の適切な照度、就寝前のカフェイン摂取の制限、などが挙げられます。
お口の中で気になることがあれば何で相談してください。
2020/11/05
こんにちは。歯科医師の岩本です。
私が訪問診療に出始めたのは
もう15年以上前になりますが、
当時は歯を削る機械を
あまり使いませんでした。
診療するのは今と同じく、
お年寄りの方が多かったのですが、
ご自身の歯が残っている方が
ずっと少なかったのです。
平成元年からは
8020運動も始まり
(80歳でも20本以上自分の歯を保とう)
口腔衛生への関心が
高まってきた現在では、
ご高齢でもきれいな歯が
ずらっと残っている方が多く、
それに伴って歯を削る治療も
増えてきました。
ところで、若い頃から何十年も虫歯のない状態をキープしてきたにも
かかわらず、後期高齢者と呼ばれるころになって
急に虫歯が増えてくることがあります。
このタイプの虫歯の多くは、若い人の虫歯とは出来る場所が
異なります。奥歯のかみ合わせの溝や、歯と歯の間ではなく、
歯と歯肉の境目が黒くなってくるのです。
これを、根面う蝕といいます。
う蝕(虫歯)とは、
細菌の出す酸によって歯が脱灰される(溶かされる)ことです。
歯の表面は、エナメル質という硬い物資で覆われており
ある程度までは酸に耐えることが出来るのですが、
歳を重ね歯周病で歯肉が下がってしまうと
エナメル質に覆われていない歯根部が露出してしまいます。
歯根の表面は、エナメル質よりも酸に弱いため、
歯磨きが行き届いていないとすぐに溶かされてしまいます。
また、歳とともに唾液の量が減り、
食後の酸性化した口腔内を中性に戻す力(緩衝能)も低下しています。
また、金属冠などの被せ物で治療された歯は、
冠の縁にとても汚れがたまりやすく、また
清掃が難しいこともあり、未治療の天然歯よりも
さらに虫歯になりやすいです。
根面う蝕を防ぐ対策は、
まずは「歯周病の進行を抑えて歯根がなるべく露出しないようにする」
次に、「露出してしまった根の表面についた汚れはキレイに落とす」
そして、「フッ素(歯質を強化する)の力を借りる」です。
昔は「歯磨き剤の泡と清涼感でごまかされて、磨けていないのに磨けたと勘違いするから」
という理由で、歯磨き剤をごくわずか使用するか、またはつけずに磨くことが
推奨されていました。
ですが、現在では、高濃度フッ化物(フッ素)配合の歯磨き剤を多めにつけ、
磨いたあとは軽くゆすぐだけにしておくことで、虫歯の予防効果が期待できると言われています。
ただし、口の中に食べかすがたくさん残っている場合は、歯磨き剤をつけてしまうと
汚れが見えづらくなることもありますので、理想的には水だけでまず落とせる汚れは落とし、
仕上げとして歯磨き剤を使用するのが良いのではないかと思います。