2020/10/22
こんにちは、歯科医師の久貝です。
季節は「秋」、だんだんと朝晩の寒さが身に染みる季節になってきましたね。
皆さん体調はいかがですか?風邪を引いてはいませんか?
ウガイ、手洗いを行うように、日頃から十分に気を付けてくださいね。
さてさて、最近 医院にて診療をしていたり、
訪問診療にて患者さんを診ていて痛感することが1つあるのですが、
やっぱり「問診」は大切だなぁ・・・という事です。
どの歯科医院にも問診票が置いてあります。
初めて歯科を受診すると「問診票を書いて下さい」と言われます。
①「今までにどのような病気に罹ったことがありますか」
②「現在飲んでいる薬はありますか」
といった内容の質問が記載されています。
その問診票の質問に正確に答えることが大切なのです。
「歯が悪いのだから歯の病気について答えればいいだろう。」
「内科的な病気は歯科治療と関係ないだろう。」
と思われるかもしれませんが、
実は全身疾患や投与薬剤の中には歯科治療と関連のあるものが意外に多いのです。
たとえば、ある種の病気では血栓を予防するために抗凝固薬が処方される場合があります。
抗凝固薬は血液が固まらないようにする薬ですから、
歯科治療で歯を抜いたあと血が止まらなくなってしまう可能性があります。
抗凝固薬を飲んでいる患者さんには歯科医師が内科の先生と相談して、
抗凝固薬をそのまま続けるか、あるいは減量するか、
あるいは一時的に中止するかを決定します。
また、アスピリン喘息という病気がありますが、
アスピリン喘息の患者さんは抜歯後などに処方される痛み止めの薬で喘息発作が起こることがあります。
むしろ歯科医院でふつうに処方される鎮痛薬の多くはアスピリン喘息を起こしやすいのです。
もし歯科医師がアスピリン喘息であること知らないと、いつもの鎮痛薬を渡してしまう可能があります。
高血圧症で血圧を下げる薬を飲んでいる患者さんは、
その降圧薬の作用によって血圧が安定しているわけですから、
もしも降圧薬を飲まずに歯科治療を受けると、血圧がひどく上がってしまって、
めまい、吐き気、頭痛といった症状が出てしまうことがあります。
ですから、歯科治療を受ける日の朝も、いつものように降圧薬を服用して下さい。
長年、高血圧の薬を飲んでいる方の中には、「もう飲まなくてもいいだろう、どうもないから」
と自分で判断して降圧薬を中止してしまう方がいます。
そうすると知らないうちに血圧が上がっていて、
歯科医院で血圧を測ったら200を超えていたということになりかねません。
これでは歯科治療どころではありません。
内科の先生の指示をよく守って、血圧が安定した状態で歯科治療を受けてください。
なので、繰り返し言いますが「必ず問診票には処方されている薬の名前を書いて欲しい」のです。
薬の名前が分かれば歯科治療と関連があるかどうかを歯科医師が判断します。
ときとして歯科治療中に気分が悪くなることがあります。
内科的な病気がある患者さんばかりではなく、日頃から元気な患者さんでも、
歯科治療中に気分が悪くなることがあります。
たいていの場合は、歯科治療に対する「不安感」、「恐怖心」、「歯科治療中の痛み」などが原因です。
もしも歯科治療中に気分が悪くなったら、早めに歯科医師に知らせて下さい。
遠慮して我慢していると、もっと気分が悪くなってしまうことがあります。
早めに対処すれば治りますから、決して我慢しないで、歯科医師に「気分が悪い」とおっしゃって下さい。
2020/10/15
こんにちは。訪問歯科医師の村山です。
前回、社会保障制度についてお伝えしましたがここから社会保険のうちの1つ、
医療保障についておはなししましょう。
【医療保障】
全ての国民が健康維持・回復・増進を図ることができるように、
国の責任において制度の枠組みを作り、
基本的人権として健康に対するさまざまな権利を保護する体制を医療保障制度といいます。
この制度は誰でもどこでも、いつでも差別なく、
どのような制度をとろうと包括的医療サービスを経済的苦痛なく(あるいは無償で)受けられる、
等の要素を満たすことが求められます。
日本の医療保障制度は社会保険方式を基本としています。
病気やけが等をした時の負担(リスク)を保険に加入する人たち全体で支え合い、
特定の個人(国民)に過重な経済的負担がかからないようにするためです。
・公的医療保険制度
上記の仕組みを使いながら、なおかつ個人の負担が過重にならず国や企業が責任を持つために、
医療全体にかかる費用のうちの多くの部分を企業や国、
自治体が公費(税金)を投入して支える制度のことです。(民間の保険は財源の全てを加入者の保険料で賄う)
公的医療保険制度の財源は公費(税金)・保険料(事業主と被保険者が負担)
・一部負担金(窓口負担)の3つで構成されます。
この割合がどうなっているかで、医療保険制度が国民にとって本当に安心できる制度かどうかが決まります。
現在日本は医療を受けるための公的医療保険に全ての国民が加入することになっています。
これは国民皆保険制度といい、いわゆる強制加入のことです。
国民は経済的能力に応じて保険料を負担し、必要に応じて医療を受け、
その受けた医療に要した費用の一部を一部負担金として支払います。
医療が必要な人に、保険給付として医療行為そのものがその都度提供される仕組みのことを
「現物給付」といい、日本はこの仕組みを採用しています。
これに対して患者が一度、医療機関に全額支払った費用を(場合によってはその内の何割か、
または一定の金額)現金で給付する制度を「療養費払い」制度といいます。
療養費払いの場合、医療が終了した後に患者が自ら加入している保険に請求して返金してもらう
(「償還払い」という)ことが原則となります。
・保険者と被保険者
保険者とは保険事業を行う主体の名称で、ここでは医療保険への加入、
保険料の徴収、保険給付等の管理運営を行う組織のことです。
また医療保険に加入し、保険料を納めて医療サービスを受ける個々人は被保険者と呼ばれます。
誰でも保険証を持ち、医療が受けられるのはこういった社会保障制度があってのものです。
そして保険証にも様々な種類があります。また紹介していきましょう。
2018/04/21
院長の谷田です。
今日と明日の2日間、神戸国際会議場で摂食嚥下障害の研修会に参加しています。
摂食嚥下障害を治療するには他職種による連携が必要です。
この研修会では、医師・歯科医師・歯科衛生士・薬剤師・言語聴覚士・理学療法士・看護士・栄養士など他職種によるそれぞれの立場でのノウハウを提供して、お互いに吸収する意図で開催されています。
当院は訪問診療も行っています。
各歯科医師・衛生士はそれぞれ研修会に参加してレベルの高い訪問診療を目指しています。
私も訪問診療をしていますが、私の専門は嚥下内視鏡(VE)を使用した摂食嚥下障害のある方への訪問診療です。
簡単に言うと以下のような症状が出ている方を診察して欲しいという、施設や医科の主治医や家族の方からの依頼です。
*最近食事時にむせるようになった。
*食べ物が喉を通らない。
*原因不明の突発性の発熱が出る。
*脳梗塞などの病気で入院して胃ろうにしていたが、口から食べてよいか判断して欲しい。
*認知症が有りうまく食事が取れない。
*誤嚥性肺炎を予防したいが、どんな食事形態(刻みにするのか、ミキサー食にするのか、トロミをどれくらいつけたらよいか)にすればよいか。
などなどです。
日本の現在の死亡原因の第1位は悪性新生物(ガン)で、第2位が心疾患、そして第3位が肺炎です。この肺炎による死亡者が急激な勢いです増えています。
肺炎の死亡者の8割以上が65歳以上の高齢者で、そのまた8割以上が摂食嚥下障害などで起る誤嚥性肺炎による死亡です。
言い換えれば肺炎イコール誤嚥性肺炎と言っても過言ではありません。
なぜこれほどまでに誤嚥性肺炎によって亡くなられる方が急増しているのでしょう。
まず誤嚥性肺炎という病態の認識が意識されだしたのが最近になってからということ。
あとは誤嚥性肺炎を診療する医師・歯科医師が潜在患者の数に対してとてつもなく少ない事です。
入院されている方が誤嚥性肺炎の診療を受けるのは何ら問題はないのですが、家庭や施設に入ってる方の診療となると話は違ってきます。
誤嚥性肺炎の診療で喉を診るために、訪問診療されている耳鼻科の先生は現在ほとんどおられないのではないでしょうか。
歯科でも喉を診るために嚥下内視鏡を使って診断し、なおかつ食形態や食事時の姿勢、もっと踏み込んで栄養状態までアドバイスできる歯科医師はごくごく限られているのが現状です。
当院でも将来に向かって私の嚥下内視鏡の技術を勤務の歯科医師の先生方に伝えようと計画しています。
摂食機能障害はわれわれ誰にでも起こりうる機能障害です。
摂食嚥下障害は、老化によって飲み込みに関連する筋肉(首周り)が衰えてもおこりますし、姿勢が悪くなっても(猫背)起こる可能性があります。
特別な事ではなく、誰にでも起こりうる可能性があるのです。
もちろん、脳梗塞やパーキンソン病の影響でも起こりますし、認知症でも起こります。
もっと言えば、服用する薬(向精神薬や一部の睡眠薬など)によっては摂食嚥下障害を起こす事もあるのです。
摂食嚥下障害は症状がでてしまうと、リハビリテーションが必要になってきます。
介護する方にも負担がかかります。
完全に回復しない場合もあります。
摂食嚥下障害においては何よりも予防が大切なのです。
ですから少しでも摂食嚥下障害に関連するような症状が出たら早めに医療機関に相談に行かれる事が重要です。
もちろん当院でも相談・治療が可能です。
2017/10/30
「生きるという事は食べる事」この当たり前のような言葉が、いかにかけがえのないものかを最近痛切に感じています。
最近訪問診療で「嚥下を見て欲しい」という依頼が増えています。
「嚥下」とはあまり聞き慣れない言葉かもしれません。
「嚥下」とは、口の中に入って食べ物を食道から胃に送り込む一連の運動を意味します。
10年以上前では嚥下という言葉自体がまだ認知されていませんでしたが、今は知らない方はほぼいないと思われます。
なぜ嚥下という言葉がこれほど注目されるようになったのか。
嚥下できないという事は逆に言えば、食道に流れるべきものが気管に入ってしまっている可能性があるという事です。
気管に入ってしまえばそれは誤嚥という事です。
誤嚥するとそれは肺炎の原因になり、高齢者にとっては死亡の原因になります。
平成23年より死亡原因の第4位だった肺炎が脳血管疾患(脳梗塞や脳出血)を抜いて第3位になりました。
ちなみに第1位は悪性新生物(ガン)、第2位は心疾患です。
その肺炎のうちの90%以上が65歳以上の高齢者で、なんとその70%以上が誤嚥が原因と言われています。
いかに誤嚥で亡くなる方が増加しているかという事です。
すでに始まっている超高齢化社会にとって深刻な問題です。
では誤嚥を凄く簡単に説明してみます。
凄く簡単にです。
ではあなた、唾液を飲み込みながら息を吸ってみて下さい。
出来ないですよね。
出来ないのが普通です。
人間の喉頭(のど)の構造は通常、空気を肺に送り込む気管と胃に食べ物を送り込む食道が並行に位置しています。
物を食べていない時は、息をする為に気管の入り口が開いていて、逆に食道の入り口が閉まっています。
物を食べたり飲んだり、唾液を飲み込む時は、逆に食道の入り口が開いて気管が閉まります。
この気管と食道が交互に開閉するシステムは、主に脳がそれを判断しています。
下の図にあるように、目で物を確認して飲み込むまで約1秒。
まさに究極の離れ業です。
この究極のタイミングも脳血管疾患や加齢、また服用している薬剤によって正常に作動しない場合があります。
これが誤嚥です。
要は何か物が入ったときに、気管に蓋をするのが間に合わず肺に入ってしまうことです。
嚥下は奥が深いので簡単に説明しましたが、下記のような症状が出た時は誤嚥している可能性が大きいです。
*食事の時間が以前に比べて長くなった。
*いつまでも口の中に食べ物が入っていて呑み込めない。
*食事中に口から食べ物がこぼれる。
*食事中にむせたり、せき込んだりする。
*水やお茶を飲んでもむせる。
*最近体重が減ってきた。
*原因不明の突発的な発熱がある。
書き出したらきりがないのでこの辺でやめますが、本当に嚥下は奥が深いです。
以下は訪問嚥下診療で私が行っていることの一例です。
突発性の発熱からの肺炎で入院されていた方(70歳代)が治癒して高齢者施設へ戻ってこられました。
病院では経鼻栄養だったのですが、施設へ戻って「口から食べるときに誤嚥していないか、またどのような食形態のものが良いのか」教えて欲しいという施設の方と主治医からの依頼です。
ご家族からは、ご本人はパンが好きなので食べさせてもよいかというご質問もありました。
以下は嚥下内視鏡検査を実施した結果の主治医への意見書です。
このような診療を訪問の現場でしています。
「~様のVE(嚥下内視鏡検査)の所見と見解について」
まず嚥下反射自体は悪くないとおもいます。声門閉鎖も良好です。
口唇の閉鎖と舌の動きも問題ありません。
但し入院されて寝たきりであったためか、首周りの筋肉が落ちており、なおかつ硬直も見られます。
また御年齢のこともあり、喉頭が下がっているので、飲み込むまでに喉頭挙上が間に合わない状態です。
実際に食べて頂いた状態での観察では、食道開口部が開かずに梨状窩に食べカスが残留している状態です。
結論として食形態は嚥下反射自体は悪くないので、現在のトロミ食からひとつ上のソフト食に上げます。トロミ食だと水分が離水してしまって、現在の喉頭挙上が充分ではない状態ではタイミングが合わず、かえって誤嚥してしまう可能性があります。
また食事時間と量も現在の半分にしてもらい(今の時間だと本人が後半食べるのに疲れてしまって誤嚥の危険がある為)、足りない分は高栄養補助食で補ってもらう方が良いと思われます。
ご家族が希望されているパン食などはまだ無理だと思われます。
今後リハビリ等の効果を見ながら様子を見ていきたいと思います。
我々の方では、義歯の調整、口腔内清掃(唾液誤嚥による誤嚥性肺炎の防止の為)、舌の運動訓練、首・肩周りの筋肉マッサージ、唾液腺の刺激等を行っています。
1ヶ月後には再度嚥下内視鏡検査で嚥下の状態を見て食形態の考察をしていく予定です。
嚥下内視鏡検査のCDをお渡ししますので参考にして頂ければと思います。」