2021/10/28
こんにちは。歯科医師の今泉です。
歯医者といえば歯と歯肉をみてもらうイメージだと
思いますが、舌もみています。
実は舌にはたくさんの役割があります。
今回は舌の役割について説明します。
A味覚
舌の表面には味細胞の集まりである味蕾(みらい)と呼ばれる、
味覚を感じるセンサーがあります。
甘味・苦味・塩味・酸味などを感じることができます。
これらの味が複雑に混じり合い、人は“おいしさ”を
楽しむことができます。
味蕾は頬の内側や唇にもありますが、大部分が舌にあります。
舌上面(舌背)の表面には、舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれる
ざらざらした小さな突起が多数存在します。
実際に味を感知する器官である味蕾(みらい)は、
この舌乳頭の部分に集まっています。
舌乳頭には以下の4種類になります。
①有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう)
周囲が凹んだ溝に囲まれ、ちょうどお堀に囲まれた城郭のような
形の円台状の舌乳頭で、舌の付け根(舌根)付近だけに、
〜10個程度存在します。有郭乳頭の突起の側面には、
一個の突起あたり数百から千個という、多数の味蕾が存在しており、
溝の部分に溜まった液(唾液などの分泌液や食餌由来の液体)に
溶け込んだ味覚物質を感知します。溝にはエブネル腺という分泌腺が
存在しており、そこからの分泌液によって溝の中身は洗い流され、
味覚物質がいつまでも留まりつづけることがないようになっています。
②葉状乳頭(ようじょうにゅうとう)
ひだ状の形態を持つ舌乳頭で、舌のふちの部分(舌縁)のうち、
付け根に近い部分にだけ存在します。葉状乳頭も突起の側面に
味蕾を持ちますが、その数は有郭乳頭より遥かに少なく、
一個の突起あたり十数個です。葉状乳頭のひだの底にも
エブネル腺が存在し、そこからの分泌液で洗い流されています。
③糸状乳頭(しじょうにゅうとう)
細くて角質化した先端を持つ舌乳頭で、肉眼で舌を見たときに
白いポツポツとして見える突起です。舌上面の全体にわたって存在します。
糸状乳頭には味蕾は存在せず、基本的な味の感知には関係しません。
糸状乳頭は、舌の「ざらざら」の正体で、食べ物を舐めたとき、
ヤスリのようにこそぎ取る役割を担っています。
④茸状乳頭(じょうじょうにゅうとう)
糸状乳頭に似ていますが、角質化しておらず、肉眼では
血管が透けて、先端が赤く見えます。糸状乳頭と同様に
舌上面の全体にわたって存在しますが、特に舌先側の表面に
集中しています。茸状乳頭の先端には通常、1〜数個の味蕾が
存在しますが、これが失われた、味蕾を持たないものもしばしば
見られます。
味蕾の数は乳幼児で約1万個、成人になるにつれて
約7500個まで減少すると言われています。
B咀嚼と嚥下
食べ物を咀嚼する時、舌は食べ物を歯と歯の間に移動させ、
歯で食ベ物を噛み砕く時には舌で食べ物を固定します。
そしてかみ砕かれた食べ物を集め、反対側の歯に食べ物を
移動させ、再度咀嚼させます。
食べ物が飲み込めるほど十分細かくなると、舌は食べ物を集めて
咽頭に送り込みます。咽頭から食道へ食べ物を送り込むために、
舌で押し込む筋力が必要になります。
咀嚼・嚥下をしやすくするために、食べ物と唾液を
混ぜ合わせるのも舌の役割です。
しかし舌の機能が低下すると、食べ物が上手に
食べれなくなってしまいます。これが咀嚼・嚥下機能障害です。
C歯並び
舌の存在はきれいな歯の並びにもかかわってきます。
舌が特定の歯を押してしまう癖や舌が左右どちらかに
偏ることが続くと歯並びが乱れてしまうことがあります。
D発音
私たちが発する言葉にも舌が深く関わっています。
言葉の発声は、肺から押し出される空気が声道を通るとき、
普段は開いている声帯が狭まることにより空気が振動し、
口の中の共鳴によって様々な音に変化させてつくられます。
この時、舌は柔軟に動き、異なった音を発する手助けをしています。
このように舌は、食事・会話・見た目などに密に関わっており
生活するうえでとても重要な器官です。
舌に問題を感じる場合は早めの受診をお勧めします。
2021/10/22
こんにちは。院長の谷田です。
今回はインフォームドコンセントについてお話します。
まず「インフォームドコンセント」という言葉の意味ですが、
簡単に言ってしまうと、患者さまへの説明と同意です。
患者さまが医師から治療内容などについて十分な説明を受け理解した上で、
患者さまご自身が同意され、ベストな治療方法を選択していただくということです。
医療においてこのインフォームドコンセントが重要な事は今更言うまでもありません。
当院では患者さまへの説明を徹底的にする事に開業以来こだわりを持って取り組んでいます。
口腔内カメラで患部の撮影、位相差顕微鏡システムによる菌の分析など精密な検査体制はもちろん、患者様と一緒にお口の中の状態を見ながら丁寧な説明を行っています。
また治療ごとに各種パンフレットも用意しておりますので、ご自由にお読みいただくことも可能です。
当院の理念は患者さまが感動する治療、充実したカウンセリングと説明ですので、その理念を大切に、スタッフ一丸となってこれからもずっと患者さまに寄り添った歯科医療サービスの提供に努めていきます。
タニダ歯科医院
〒669-1133 兵庫県西宮市東山台1-10-5
TEL:0797-61-2000
URL:https://www.tanidashika.jp/
Googleマップ:https://g.page/r/CUn1zmeIAnWtEAE
2021/10/21
こんにちは
歯科医師の法貴です。暑い日から突然ですが
寒くなったので皆様体調管理には気をつけてお過ごし下さい。
今回は口腔カンジダ症についてです。
菌はヒトの皮膚や消化器官に住み着いており、
菌とヒトは互いに助け合って生きています。
それぞれの器官に住み着いた菌を常在菌と呼び、
ヒトが生きていくうえで必要な活動を行っています。
口腔内に定着した菌は口腔内常在菌といい、
1200近くの種類があります。口腔内常在菌の総数は
100億個いるとも言われており、外来微生物の侵入を
防ぐことで、感染を予防する役割を担っています。
舌、頬粘膜、歯肉、歯肉溝にはそれぞれ異なった菌が
分布しており、バランスを維持しながら生活しています。
真菌に属するカンジダも、ヒトの口腔を含めた消化管に
常在菌として生息しています。
カンジダは、酵母と菌糸という2つの形態をとっています。
酵母は卵型で、1個1個が独立して増殖することができます。
カンジダは、栄養状態が良いと酵母の形で次々に増殖するが、
時として菌糸を形成することがある。カンジダ酵母は粘膜と
物理的に引き合って一次付着するが、その力は弱く、
簡単に除去されます。しかし、この酵母は唾液中や血液中の
タンパクを介してニ次付着する。一次付着より力強く付着し、
菌糸を伸ばすとさらに強固に付着します。
カンジダの酵母が菌糸を上皮下に侵入させ、痛みや発赤などの
症状を呈すると口腔カンジダ症とよばれます。
通常は周囲の菌に抑え込まれて増殖や病原性を示さないが、
宿主の生体防御反応の低下にともない症状を発現し、
日和見感染症であるカンジダ症となります。
口腔カンジダ症は、宿主と細菌のバランスが崩れて生じる
日和見感染です。このバランスを崩すリスクファクターには、
口腔乾燥、不潔な義歯、放射線治療、ステロイドの局所投与などの
局所的因子と、高齢、免疫不全、悪性腫瘍、抗菌薬やステロイドの全身投与、
脳血管障害や糖尿病などの全身的因子とに分かれます。
AIDSに罹患してる人など免疫力が低下してリスクファクターが
取り除けない場合は重症化しやすく治りにくいです。
口腔カンジダ症の症状は、口腔粘膜の疼痛や灼熱感、
味覚異常であり、嚥下困難を訴える方も多いです。病体としては、
白苔を形成する偽膜性カンジダ症、発赤をともなう紅斑性カンジダ症、
上皮の肥厚をともなう肥厚性カンジダ症に分けられます。
次回はそれぞれの特徴について書いていきたいと思います。
気になる事があればなんでも気軽に相談ください。
2021/10/14
こんにちは。
訪問担当歯科医師の岩本です。
本日は義歯の管理についてお話ししたいと思います。
歯を失ってしまった時に使用する着脱式の義歯(入れ歯)は、大きく分けると
総義歯(総入れ歯)と部分床義歯(部分入れ歯)の2つに分けられます。
一般的な保険診療での義歯において、
その違いは固定用のバネがついているかどうかです。
このバネを歯科ではクラスプと呼んでいます。
クラスプが全くついていないものを総義歯、
一つでもついていれば部分床義歯と呼びます。
義歯の使用サイクルは、日中起きている間はできる限り装着し、
夜間は外して保管しておくというのが原則です。
小さい入れ歯ではそう影響がないこともありますが、
大きい入れ歯ですと、入れている時と外している時とでは、
咀嚼の仕方や飲み込み方がかなり変わってきます。
しっかり嚥下するには、上下のかみ合わせがあったほうが有利です。
義歯を入れ上下の歯でかみしめることにより体幹のバランスも
取りやすくなりますので、転倒の予防にもなります。
高齢者施設などに入所されている方で、
食後のケアタイムに義歯を外して洗い、
そのあとのリハビリを義歯無しでされてることがあるのですが、
本当はリハビリの時こそ、義歯は装着されるほうが望ましいと考えます。
また、部分床義歯のクラスプを掛けている歯は、
長く義歯を外したままでいると移動してしまうことがあります。
あまり移動してしまうと元の位置に義歯を装着することができなくなります。
このようなことを避けるためにも、
可能であれば日中は入れておいてください、とお願いしています。
一日の終わり、就寝前には必ず義歯を外して口腔ケアを行い、
義歯は流水下でこすり洗いした上で、
水(+義歯洗浄剤)を入れた保管容器に浸しておきます。
義歯は入り組んだ粘膜の表面にフィットするようオーダーメイドで作られていますので、
つるつるに研磨された外側と比べて、
内側はかなりでこぼことした形態になっています。
ですから、きちんと汚れを落とすのは案外難しいのです。
水でざっと流しただけでは、
窪んだ部分にうっすらと歯垢が残っていたりします。
特に、クラスプの付け根の部分には汚れがたまりやすく、
これらは見落としがちです。
清掃の際は明るい場所でよく見ながらこすり洗いすることが必要です。
義歯を夜間に外しておく理由には、以下のようなものがあります。
①顎の骨や粘膜を休ませる
ずっと義歯の下敷きになっている粘膜の部分は血行が妨げられています。
また、義歯を入れていても歯ぎしりをされる方の場合、
顎の関節に負担がかかります。
一日24時間のうち、8時間位は外す時間を作ったほうが良いと言われています。
②就寝時の唾液分泌量の低下による細菌の増殖を少なくする
義歯の下敷きの部分には唾液が触れにくくなっており、
自浄作用が働かない状態になっています。
また、舌や食べ物も直接接触しないため、
粘膜表面の老廃物は剥がれにくくなっており、
新陳代謝が妨げられています。
せめて夜間は外して、粘膜の健康を保つようにしたいところです。
③小さな部分床義歯の誤飲・誤嚥を防ぐ
ピッタリ合っている義歯だとしても、
着脱式である以上、何かの拍子で外れる危険はあります。
横になっている時に外れた場合は特に、
喉に落ち込む危険性があります。
但し、これらはあくまで「原則」であって、
実際はその通りにいかないこともあります。
例えば認知症のため、
ご自身で義歯をすぐ外してどこかにしまいこむ(無くされる)方でしたら、
食事時以外は介護者が義歯を預かる形にせざるを得ません。
また、夜、義歯を入れておかないと落ち着かなくて眠れないという方、
数少ない残りの歯がぐらついているために
義歯を入れて固定したほうが却って痛みが少ない、
という方もいらっしゃいます。
そのあたりはケースバイケースの対応が必要です。
夜間、どうしても外したくない方の場合は、昼間の、
食事以外の時間帯で義歯を外す時間を作ることをお勧めします。